雪組『ひかりふる路』新人公演のキャスト別感想です。
お話の進行順の感想にしようか、迷いました。
登場人物同士の絡みの相乗効果ってありますよね。
それが大きく感じられたので、場面ごとに語りたいと思いまして。
しかして、それをやりかけたら、途方もなく長くなりそうで……断念。
少し辛口の箇所もあるやもしれませんが、お許し下さい。
新公に完成度の高さは求めていませんが、成長への期待を込めて、課題だと感じた事を述べさせて頂きます。
* 演出:生田大和
生田先生、宙組『シェイクスピア〜空に満つるは尽きせぬ言の葉』に続き、スマッシュヒット。
ワイルドホーン氏の音楽と、生田先生の脚本・演出のマリアージュは想像以上でした。
文学的な世界を、甘やかでほろ苦い情緒を絡めて描かれる作品が多い気がします。
明日海りお主演代表作として名高い『春の雪』の頃から、その味わい深さは変わらずに、生田ワールドを広げていって下さい。
* 新公担当 演出:指田珠子
新人公演の担当演出家・指田珠子先生。
今回初めて存知上げました。
基本は本公演と変わらず。
ただ、秘かに効率よく舞台を回す手腕をお持ちのように感じました。
特に支障がない群舞では、本公演と同じ面子が担当していたりします。
例えば、ロベスピエールが酒場で出会ったマリー=アンヌを追いかけ担当街頭で、男女が踊りますよね。
あの場は、わざわざ新公用に当てず、本公演で踊ってるメンバーをそのまま登用。
他にも、主要キャストだとしても、ある場面の群舞に、出る場が前後になくてダンスが得意な生徒を投入したり。
今回のような楽曲も多い完全新作オリジナルは、するべき場の稽古に集中させる方が良い…という考え方はアリだと思います。
本公演の演出を立てつつ、新公なりのアドリブや演技のアレンジも加えつつ、さりげなく無駄を省き、生徒の負担を減らしてらっしゃるように感じました。
観ていて気づいた限りからの推測ですので、勘違いしてたら、ごめんなさい。
生田大和氏や指田珠子氏に限らず、宝塚の演出家…特に新進気鋭の若手の聡明さには、舌を巻きます。
(生田先生はそろそろ中堅なのかな?)
* 綾 凰華(98期・研6)マクシミリアン・ロベスピエール(本役・望海風斗)
私が綾さんを認識したのは、星組『スカーレット・ピンパーネル』新人公演。
ロベスピエールを演じてらして、「本役(七海ひろき)同様、綺麗だな」と印象に残りました。
その後、まさかの雪組異動、まさかのロベスピエール役再び。
ただし、今度はロベスピエールが主役です。
せり上がりで登場した時、目を閉じた姿でしたが、やはり美しいなと。
本役(望海風斗)のロベスピエールも美しいのですが、あちらは硬質の美。
綾さんはやや線の細い、柔らかい美貌。
少女マンガの王子様ビジュアル。
歌が多い…しかも、難曲ばかりの本作。
決して歌が上手いと言えない綾さん。
どうなるかと思いましたが、誤解を恐れずに言うと、「巧拙が気にならない表現力」で乗り切りました。
望海さんなら高らかに歌い上げるところを、綾さんはアプローチを変えてきたように思いました。
ある時は語りかけるように、ある時は振り絞るように。
演技の感情表現を優先することで、望海さんほどの声量や肺活量がなくても、「味わい深い歌唱」として成立させました。
これは、あやなちゃんの考えによるのでしょうか?
それとも、新公担当演出家の指田珠子先生の案でしょうか?
どちらにも拍手ですね。
あやなちゃんは繊細な表現に長けていますね。
特に苦悩する姿、哀しみを押し殺す表情など、甘い美貌と相まって、もっと見たくなります。
ダントン邸での決裂、処刑した亡霊達との邂逅、牢獄でのマリー=アンヌとの再会と別れなど、ロベスピエールの苦悩と哀しみが沁み込むようでした。
* 潤 花(102期・研2)マリー=アンヌ(本役・真彩希帆)
彩風咲奈主演『CAPTAIN NEMO』で、娘役2番手ポジション・王女ラニ役に抜擢された潤花ちゃん。
新公初ヒロインに早くも抜擢されました。
本役をよく研究していました。
特に発声や台詞まわしなど、本役に寄せまくり。
声の高さや声色まで似ていて、感心しきりでした。
歌は、高音部に苦しんでいましたが、難曲揃いですからね。
研2で、限られたお稽古時間の中、歌い切れただけでも拍手もの。
声が掠れたり、音を外しかけた箇所もありましたが、声がひっくり返る事なく。
綾さん同様、気持ちを込めて歌えていたと思います。
可愛らしい顔立ちなので、メイクを研究したら、さらに舞台で映える事でしょう。