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「絶対零度で火傷しな」柚香光の六条御息所(新源氏物語)

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花組『新源氏物語』の感想です。
ネタバレ含みますので、まだ知りたくない方はご注意ください。

とりあえず土日に2回観劇しました…が。
大波小波に、ざっぱんざっぱん浚われて。
これでもかっ、これでもかっっっと魔球を打ち込まれて。
不二先輩、つばめ返しとヒグマ落しで充分なんですけど的な。
(『テニスの王子様』をご存知ない方、ごめんなさい)
結果的に…「何も言えねー」な北島康介状態です。

…なので、インパクトが大きかった事柄から、 順不同で吐露させて頂きます。

前情報なしで臨んだ場合、 明日海りお扮する光源氏の美貌は最大のインパクトだと思います。

ただ、宝塚舞踊会 で『花源氏』を観ていた為、 大方の予想がついてたもので。
『花源氏』より、『新源氏物語』の光君の方が、 さらに光り輝く美しさですが。
そこらへんは、さすがだなと。

…という訳で、私にとって最大のインパクトは、六条御息所( 柚香光)です。
良い意味で、予想を大きく裏切られました。

柚香さんは芝居でもショーでも、 表現過多なところがあると感じてきました。
それが彼なりの魅せ方で、実際ものごっつ目を惹きます。
ただでさえ華がある容貌なのに、 さらに派手にデコレーションが施されて、否が応にも目につく… みたいな。

トップの明日海りおさんと絡む事も増えてきた柚香さん。
明日海さんは、とても繊細な芝居をする方です。

いうなれば、明日海りおは『日本の洋菓子』
とても繊細な細工や味つけが成されています。

余談ですが、日本の洋菓子は、 いっそ本場ヨーロッパの物より美味だったりするそうな…。
それゆえ、海外へのお土産に洋菓子を持参すると喜ばれるそうな。
どんな豆知識なの、これ。

つまり、明日海さんはそれくらい美味しいってことで。
食べたことないけど、まだ。
(……まだ?)

対して、柚香光は『アメリカのケーキ』
「えっ、食べられるの?」 と日本人なら度肝を抜くような色彩でコーティングされてたりする 。

柚香さんの存在感と容貌は、下手をすると「立てるべき相手」 まで食いかねません。
運よく、現トップ・明日海りおは、 圧倒的な華と美貌を備えているため、食われる心配はありませんが。
ただ、キラキラしすぎて目が眩むよね、この人達が組むと。

芹香斗亜さんも、わりとキラキラ系ですしね。
宝塚は華やかでナンボではありますが、 今の花組中核メンバーは眩しすぎて目が潰れます。

やはり、ここは珠城りょう君を連れてきて、 瀬戸かずやさんと共にリアル男子系(え?) を補強してはどうかと。

…閑話休題。

柚香光さんの六条御息所。
配役発表には驚いたものの、光ちゃんなら、 ビジュアル期待できるし、楽しみでした。
怨霊になるほどの恨み節、光ちゃんはどう料理するかな…と。

そうです、ねっとりした感情表現を予想してたんです。
柚香さん、ねっとり系はお手の物ですし。

ところが。
ところが。
ところが 。

柚香光の六条御息所は、大人の女性でした。

抑えた表情、抑えた口調、抑えた所作。
それでも、つい零れてしまう皮肉や恨み言、そして未練。
光源氏が背を向けて去ってから初めて、いじらしく追いすがり、 もう見えぬ背を目で追います。

愛しい背中に追いすがる……まさに背の君(夫)
いえ、背の君と背中は、関係ないそうですが。
妹背、あるいは妹兄と書きますし…そう、背中ではなく兄なんですね。
「妹兄」で「夫婦」と同意とは…『月雲の皇子』が脳裡をよぎります。
おっと脱線、失礼いたしました。

葵の上との車争いの場面で、御息所は牛車の簾を外され、 姿を晒すことになります。
このとき、御息所は蒼白になり、茫漠としています。
騒ぎ立てもせず、泣きわめきもしません。

それでいて、その恨みから生霊を飛ばし、葵の上を呪殺。

舞台の手前に葵の上、奥に御息所がおり、 光源氏は苦しむ葵の上に寄り添います。

御息所は憑かれたように、蜘蛛の糸を引っ張るように、 恨みを葵の上へぶつけます。
ただ、この時も、表情はうっすらと苦悶を浮かべる程度。
非常に抑制がきいた演技です。

…で、圧巻がここ。

葵の上を呪う、生霊となった六条御息所。
その姿を、光源氏に知られた瞬間。

ここです。
ここで是非、柚香光にオペラグラスを向けてほしい。

光源氏に、己が浅ましい姿を見咎められた瞬間。
六条御息所は、ふわっと幽かに微笑みを浮かべます。
ほんの一瞬あるかなきかの、微細な表情の変化です。

心離れ、足が遠のいた 光源氏。
かの愛しい人が、ふたたび己の名を呼んでくれた。
存在に気づいてくれた。
みつめてくれた。

その喜びが、ほんの幽かな微笑に滲み出ていました。

ただ、その微笑は一瞬で掻き消えるのですが。
一瞬で消えるからこそ、深い印象が残っています。

柚香光が、こんなにも繊細な演技を魅せてくれるなんて。
「理知的で怜悧だからこそ、深く懊悩する大人の女性」を演じ切るなんて。

顔立ちも、声も、話し方も、所作も、すべてが恐ろしく似合う。

六条御息所は、娘役が演じたら「女」 が色濃く出過ぎたかもしれません。
知性と教養の豊かさや、未亡人として強く生きてきた姿を「男勝りな側面」として過不足なく表現できたのは、男役としての土台があればこそかと。

そのさじ加減ゆえに、嫉妬に狂って生霊と化す「どろどろした業の深さ」を演じながら、女のいやらしさがなく、むしろ哀しみと切なさを強く印象づける演技となりました。

しかも、光源氏と互いに引き立てあう相乗効果を見せていました。
アメリカの大味なケーキから見事に脱した柚香光。

いえ、私が勝手にそう思ってただけで、柚香光の本来の持ち味はそんなに大雑把でも、突飛でもなかったのかもしれませんね。

柚香光の六条御息所は、素晴らしい。
間違いなく、柚香光の当たり役の一つとなるでしょう。

私は明日海りお贔屓です。
ですが、この場面では迷いなく、六条御息所に注目しています。
息を詰めて、柚香さんの微細な表情の変化を追っています。
この時ばかりは、明日海源氏は声しか聴いてません。
(すみません。でも、オペラグラスの視界に入り切らないのよ…)

柚香さんは歌唱力さえつけば、鳳蘭さんや麻実れいさんクラスの伝説的なタカラジェンヌになるかもしれません。

同じく伝説のタカラジェンヌでも、大地真央さんや天海祐希さんではないのよ、光ちゃんは。
明日海さんは、こちらかな…。
路線が違うんですね。

THE タカラヅカ的な伝説のジェンヌの系譜に、柚香さんも名を連ねる予感がします。

柚香さんは、六条御息所と柏木の二役でしたが。
柏木の方も、とっても似合ってました。

六条御息所とは逆に、柚香さんの体温高め、熱い演技が観られます。
真直ぐな恋情を相手にぶつける柏木。
若き日の光源氏にも似た、刹那に燃える恋に身を焦がします。

御息所も情熱的なんですが。
凍りついた情熱というか…蒼ざめた炎ともいうべき、大人の懊悩に満ちた情熱。

六条御息所も、柏木も、身を滅ぼすような激しい恋をします。
身を焦がすのは勿論、俺に近づいたら火傷するぜ、みたいな。

柏木は、燃えたぎる炎で負う火傷。
六条御息所は、ドライアイスで負う火傷。

どちらも、とても熱くて痛い。
その熱感を、それぞれの温度を、柚香さんは見事に演じ分けています。

絶対零度で火傷する。

そう、冷たすぎても火傷するんですよね。(凍傷)
それを思い出させてくれた、柚香光の六条御息所。
沸点を超えた柏木との二役だからこそ、よりその違いが際立ち、魅力を増したとも思います。

花組『新源氏物語』見どころの双璧は、柚香光といっても過言ではないかもしれません。


双璧の片側が、明日海りおの光源氏である事は間違いありません。
明日海さんの繊細な演技は、他の追随を許しません。

ただ、柚香さんがここまでやってくれると思わなくて。
インパクトという点に於いて、ワタシ的に最大でした。

「絶対零度で火傷しな」

私が花組プロデューサーなら、そんなコピーをつけて売り出したい、れい君を。
れいちゃんなら、ビシッとポーズも決めてくれそう。
宝塚では、そんな一昔前のアイドル歌手みたいなブロモーションはしませんけどね。

はい、私が見てみたいんです、そんなフレーズが似合う柚香光を。
六条御息所としても、男役としても。

ちなみに、れいちゃんだから零度にしたわけじゃないですよ?
たまたまです…っていうか、誤字脱字チェックしてて気づいたダジャレに背筋がひんやり(汗)



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