2021年の宝塚歌劇について、観客視点で振り返りたいと思います。
1)顧客サービス
2)2021 芝居ラインナップ(大劇場編)
3)2021 ごくごく個人的なランキング
以上の話題で語ってみます。
別箱やショーは別枠で書きたいと思っています。
今年中に書けるかな。
1)顧客サービスはノンストップ
2021年も秋口まで、首都圏や近畿圏には緊急事態宣言が繰り返し発出。
そんな中でも、宝塚歌劇は予定演目を粛々と上演。
無観客上演もありつつ、感染対策の徹底に励んだ劇団。
クラスター発生や公演中止もなく。
新人公演も復活しました。
LIVE配信の幅も広がりました。
2020年度(2020/04~2021/03)時点では配信の対象外だった
・若手のバウ主演公演
・新人公演
これらも2021年度から配信対象になりました。
風間柚乃主演:月組バウ『Love and All That Jazz』
縣千主演:雪組新人公演『CITY HANTER』(東京のみ)
以上の作品が、栄えある一作目となりました。
主演がトップや二番手でも、著作権問題で配信不可のケースはありますが。
宝塚は座付き作家の作品が多いので、大半の舞台が配信対象になりえます。
…というように、様々な変化が続いた2021年。
コロナ禍の産物といえましょう。
従来のままなら、5~6年かかっただろう変化が一気に来ました。
劇場での観劇がままならぬ人が増えた分、プライベートゾーンで安全確保しつつ、観劇を楽しむ。
そんな選択肢を設けた2020年。
その幅や機会をさらに広げた2021年でした。
2)2021年 芝居ラインナップ(宝塚大劇場)
私は本拠地組なので、己の観劇ベースで振り返ります。
2021年は全8作品上演。
うち、トップスターまたはトップ娘役の退団公演が3作(雪、花、月)
新トップコンビお披露目公演が3作(宙、雪、花)
二番手男役スター退団公演が2作(花、星)
あらためて変化が続いた一年でした。
雪組『fff-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
2021/01/01(金)~02/08(月)
作・演出:上田久美子
主演:望海風斗、真彩希帆
※トップコンビ退団
星組『ロミオとジュリエット』
2021/02/14(土)~03/29(月)
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎
演出:稲葉太地
主演:礼真琴、舞空瞳
花組『アウグストゥス-尊厳ある者-』
2021/04/02(土)~05/10(月)
作・演出:田渕大輔
主演:柚香光、華優希
※トップ娘役、二番手退団
月組『桜嵐記(おうらんき)』
2021/05/15(土)~06/21(月)
作・演出:上田久美子
主演:珠城りょう、美園さくら
※トップコンビ退団
宙組『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot-』~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに依る~
2021/06/26(土)~08/02(月)
作・演出:生田大和
主演:真風涼帆、潤花
※新トップコンビお披露目(トップ娘役交替)
雪組『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-
2021/08/07(土)~09/13(月)
原作:北条司「シティーハンター」
脚本・演出:齋藤吉正
主演:彩風咲奈、朝月希和
※新トップコンビお披露目
星組『柳生忍法帖』
2021/09/18(土)~11/01(月)
原作:山田風太郎「柳生忍法帖」
脚本・演出:大野拓史
主演:礼真琴、舞空瞳
※二番手退団
花組『元禄バロックロック』
2021/11/06(土)~12/13(月)
作・演出:谷貴矢
主演:柚香光、星風まどか
※新トップコンビお披露目(トップ娘役交替)
3)ごくごく個人的なランキング
この順位は、作品の優劣は無関係。
私の感想に過ぎません。
ゆえに、めっちゃ偏ってます。
ごめんなさい。
8位 星組『柳生忍法帖』
礼真琴の柳生十兵衛はかっこよかった。
殺陣の振付で歌い踊るとか、しかもハイレベルで…常人ではありません。
改めて、礼真琴の舞台技術の高さを実感。
七本槍はそれぞれ個性が異なる敵役ですが、その個性を描き切れておらず、残念。
堀家の女たちも同じく。
個々のキャラクターが埋没していたような…。
原作は毒気やエロスに満ち、そこに魅力があります。
その個性を生かしつつ、宝塚で上演する事は難しいかもしれませんね。
7位 雪組『CITY HUNTER』
北条司先生の原作漫画も、テレビアニメも見ていました。
齋藤先生の「好き♡」もめっちゃ伝わってきました。
私も好きです。
ただ、『エル・アルコン-鷹-』と同じ現象が…。
好きすぎて詰め込み過ぎてタイムアップ、みたいな。
齋藤先生のコダワリ満載すぎて、調理時間が足りず。
二次元キャラクターの作り込みは流石のタカラジェンヌ達。
あゆみさん(沙月愛奈)に大女優役か冴子役を振ってほしかったかも。
6位 星組『ロミオとジュリエット』
愛ちゃんの死はもちろん、ティボルトも良かった(愛月ひかる)
ぴーすけ(天華えま)の死も良かった。
乳母(有沙瞳)の歌や演技も良かった。
礼真琴は言うに及ばず。
舞空瞳のジュリエットも可憐かつ強かった。
聴き応え・見応えがありました。
役が少なく、活躍できる組子が限定された点が残念。
本作を最後に退団する生徒に見せ場をつくれなかった事も惜しまれます。
歌が得意な生徒が含まれていただけに残念すぎました。
一本物なので、ショーもなかったですしね。
5位 宙組『シャーロック・ホームズ』
私は小学校低学年から、ミステリ・ファンです。
ホームズは鉄板。
私もコナン君やあゆみちゃんと一緒に少年探偵団として活動したい!
(作品ずれてますよ~)
生田先生の「好き」「こだわり」「情熱」が詰め込まれた作品。
マニアックな人、大好きです。
生田先生のホームズ講演会があれば参加したいです。
副題にもあるように「コナン・ドイルが生み出した登場人物への愛とオマージュ」
謎解きの面白さ以上に、そちらの比重をより高く感じました。
ホームズ・ファンとしては握手。
純粋な観劇視点では、やや物足りなく感じました。
世界的オペラ歌手という設定のヒロインを、歌が苦手なトップ娘役(潤花)に振った生田先生。
一体どうなるかと思いきや、最大限の配慮を感じる粋な演出を見せてくれました。
歌劇場で紹介し、これから歌うぞって処で場面展開したり。
オリジナル曲は歌いやすい音域に限定したり。
座付き作家オリジナル作品だから可能な技を繰り出し、演者・観客ともにホッとさせ、クオリティを上げてくれました。
4位 花組『アウグストゥス』
柚香光演じるオクタヴィウスがツボにはまりました。
あの弱っちい感じが何ともいえず、ツボ…!
実在のオクタヴィウスも頑健といえず、むしろ身体弱めだったとか。
柚香光はいろんなタイプの男子を、それぞれ魅力的に演じますね。
仮に欠点があっても、それすら魅力にしてしまう。
そんな「男の可愛げ」を身につけています。
おそろしいな、れいちゃん…。
華優希の演技力も見どころでした。
実存と幻想の空気感を醸し出していたと思います。
物語としては、面白いとは言い難い作品だったと思います。
ただ、キャラクターは魅力的に演じられていました。
夏美ようの威厳あるシーザー
凪七瑠海の妖艶なクレオパトラ
瀬戸かずやの熱血アントニウス
水美舞斗の逞しいアグリッパ
永久輝せあの苦悩するブルートゥス
聖乃あすかの人を食ったマエケナス
音くり寿の一途なオクタヴィア
そして民衆。
あるいは兵士。
下級生は二組に分かれていたので、モブが通常より少なめでした。
そんな中でも力強い民衆のコーラスや踊りを、劇場空間にぶつけていました。
3位 雪組『fff』
こんなにストレスフリーで耳福な舞台と出会えるのは、次はいつになることか。
だいきほ時代の雪組作品は、いつも安心して観られました。
トップコンビが歌唱力抜群って、素晴らしい…!
ずっと己の不幸を嘆いていたベートーヴェン(望海風斗)
「ラストで突然『幸せだった!』と言い出して驚いた」との声を耳にしました。
あの心理転換にビックリする人は多そうですね。
テレビ版エヴァンゲリオンの最終回がまさにあんな感じでした。
当時は私も面くらいました。
『fff』に関しては、感覚的に共感しました。
ただ、説明するのは難しいですね。
何かの符合がパチンと合った瞬間、「こういう事か」と全てが繋がっていく感覚かな、と。
(必ずしも全てが同時ではなく、時間差がある場合もあるかと)
ヘレン・ケラーの「WATER」みたいな感じでしょうか。
舞台『奇跡の人』で有名な「抽象名詞を理解した瞬間」ですね。
上田久美子先生が伝えたい事は、感覚的で本質的。
そういう事をわかりやすく伝えるのは、ものすごく難しいと思います。
肚に落ちる点(共感度)では8作品中で一、二を争う高さでした。
Water…!(違)
2位 月組『桜嵐記』
多くの観客が紅涙を絞った傑作。
上田久美子先生、渾身の作品。
エモーショナルな作品ですが、技巧面も工夫が凝らされまくり。
まず、冒頭で時代背景や人間関係をサラッと簡明に解説。
三兄弟という個性的なイケメン配置。
登場人物と演者の魅力的な融合。
弱者、敗者へ寄せる心情(判官贔屓)を引き出す。
桜をモチーフに、儚さや美しさを基底に置く。
ストップモーションを用いて、時系列を入れ替える。
スローモーションを用いて、戦闘の激しさを表現。
勇壮で華やかな出陣式をラストシーンにおく事で高まる悲劇性と感動。
書き切れないほど、演出効果を散りばめています。
上田久美子先生の代表作の一つとして数えられる事は間違いなし。
脚本や演出の(高度かつ多彩な)お手本としても素晴らしい。
宝塚の作劇で最も注力すべきは「主演を魅力的にみせる」事だと思うんですね。
それをしっかり押さえている。
しかも、主演者の個性を最大限に生かして。
上田久美子と珠城りょうは最強タッグ(の一組)だったと、しみじみ感じました。
『月雲の皇子』と『桜嵐記』は、上田先生と珠城さんがいてこそ生まれた舞台作品。
…ですが、いつか時が来たら、再演してみてほしい気もします。
その時に在団している生徒たちによって。
再演のハードルは高いと思いますが、宝塚オリジナル作品として引き継がれてほしいです。
月雲の皇子も、桜嵐記も。
1位 花組『元禄バロックロック』
単純に「どの作品を最もリピートしたいか」で決めました。
バロックロックは何度観ても、そのたび新鮮に楽しい。
物語の面白さ。
(多少ご都合主義だけど、そこはご愛敬)
キャラクターの魅力。
歴史はじめ、様々な知識は膨大。
でも、それを感じさせません。
難しいことを柔らかく、わかりやすく。
それが成立している作品です。
「楽しめる」ことに基点を置き、ストレスを可能なかぎり排除。
主要キャラクターのエモーショナルな側面もしっかり描き込んでます。
これは谷貴矢先生が頭が良いから出来ることでしょう。
頭が良く、ご自分がよくよく理解しているからこそ。
上質なエンターティンメント作品だと思います。
演者もそれぞれ、とても魅力的に役を生きていました。
どの役も、ホント好き。
それに敵役はいても、真の悪役は存在しない。
それぞれの立脚点によって、それぞれの正義や願いがある。
…という事は、わざわざ説明しない。
説明しなくても、気づけるように描いてあります。
そこも上手い。
『桜嵐記』と『元禄バロックロック』は、説明台詞が最少限に留められています。
『桜嵐記』は冒頭でまとめて説明する斬新な手法をとっています。
『元禄バロックロック』は「忠臣蔵」という有名な史実をベースにする事で、共通概念を持たせています。
プラス、案内役(タクミノカミ)を配置。
説明せずともわかるって、ものすごく高度な技。
わかりやすく表現できるって、聡明さの証拠。
同時に、相手への思いやり。
観た人が考えるよう、敢えて謎を残したり、わかりづらく描くこともあります。
それはそれで、作品の狙いだったりします。
そして、そういう面白さもあります。
だから、一概に言い切れないのですが。
ただ、『元禄バロックロック』は私の気持ちにフィットした作品。
シンプルに好きです。
以上、わたしの感想でした。
あなたの感想は如何でしたでしょうか。
∇今年も面白かった♡