2024年7月16日(火)名古屋・御園座にて、花組『ドン・ジュアン』初日公演を観ました。
感想を書き始めたものの、途中でパタリと。
仕事と睡眠を優先してました。
初日と二日目以降、いろいろ変化があったそうで。
初日の反省点を生かし、修正と調整がなされたのでしょう。
★永久輝せあ(97期・研14)
花組『ドン・ジュアン』を観て、印象に残っている事。
永久輝せあの美貌と色気。
再演は、初演と比較されがちです…が。
望海風斗とも、藤ヶ谷太輔とも違う、永久輝オリジナルでした。
凝った髪型や華やいだ美貌は、花組『CASANOVA』を彷彿と…。
『CASANOVA』も生田大和先生が手掛けた作品ですね。
同じ女たらしでも、(史実の)カサノバの根底には女性へのリスペクトがあります。
対して、ドン・ジュアンは、女性への不信感が根にある。
彼の女性への対応は、母への復讐の代償行為。
…という事は、初演を観ていないと分かりません。
花組版では、少年期の母親との関わりは一切触れず。
説明もなし。
それでもなお、女性への冷酷さはドン・ジュアンの本質ではないだろう、と。
それが伝わるのは、マリアと出会って以降の表情、動作。
その初々しさは、無垢な少年そのもの。
初演と外部版では「マリア=無垢」という印象があるのですが。
花組版では誰あろう、ドン・ジュアンが無垢の代名詞か、という。
酷いクズ野郎なのに、憎めない。
思わず、フラフラ吸い寄せられる魅力。
美しすぎるが故に、観劇当日は
「こんだけ美形だと、ホイホイされるわな」
…なんて思ったんです、が。
複雑さに潜む、純粋なきらめき。
説明不足なのに、有無を言わせぬ説得力。
ひとこちゃん、いつからこんな表現力を…?
いや、圧倒する力を…?
さらにダメ押しが、カテコ挨拶。
まず、紫門ゆりや副組長から「本公演は、永久輝せあと星空美咲の花組新トップコンビのプレお披露目でもあります」と紹介され、美咲ちゃんを振り向き、二人で客席に向かってペコペコ。
シンクロしてる…
可愛すぎかよ…
続いて、副組長から紹介を受けてのトップスター挨拶。
「花組の永久輝せあです!!!」
マイクの音量が狂った?…と驚くような特大ボイス。
のびのび、楽しそうに話すひとこちゃん。
初日の朝、生田先生が『今日は特別な日になる』と予言したそうですが。
「忘れられない、特別な日」だと、実況してくれました。
2回目のカテコで早くも立っちゃう御園座の民。
幕が上がり、客席を目にした永久輝さん、目を見開いて嬉しそう。
美咲ちゃんは手で口を覆い、びっくり。
二人して、顔を見合わせて笑顔。
ひとこちゃんの上手隣は綺城ひか理、下手隣が星空美咲。
カテコの間、何度も両隣を振り向き、アイコンタクト。
亡霊の騎士団長メイクでも隠しきれないイケメン・あかさん。
ひとこちゃんと美咲ちゃんを優しく見守ってました。
4回ほど続いたカテコ。
「あと21回、公演がんばります」と意気込む永久輝さん。
さらに熱がこもっていくに相違ありません。
★星空美咲(105期・研6)
宝塚歌劇団には「歌が上手いとトップ娘役になれない」呪いがかかっています。
…というのは半分冗談ですが、おおむね事実かと。
そんな中で呪いに打ち勝ち生まれた、全方位レベル高めなトップ娘役。
加えて、ヒロインだと解る華やぎビジュアル。
マリアは大きな石を彫る彫刻家。
その設定ゆえ、衣装はパンツスタイル。
ダークな色調で、腰には工具入れを提げています。
仕事からマリアを引き剥がそうとする、婚約者・ラファエル。
対して、巨石を穿つマリアに心惹かれるドン・ジュアン。
マリアからすれば、ドン・ジュアンは「己を丸ごと受け容れてくれる」と感じられたことでしょう。
天職に打ち込む己に、魅力を感じてくれるのですから。
雪組版や外部版は、マリアは救いの天使のイメージがあったような。
花組版のマリアは悩みと葛藤を抱き、狡さ弱さを持ち、人間くさい。
歌劇の鼎談で、下手をすればマリアは悪女になりかねない、と語っていた美咲ちゃん。
なるほど、こういう事か…と観てみて納得。
花組版はことごとく説明を端折っていますが、それでも観終わった後に「なんかよく分からないけど、凄かった…」と圧倒されます。
それは、センターの二人の歌・芝居・ダンスの熱量ゆえかと。
花組版『ドン・ジュアン』は等身大の男女の物語になっています。
…って、2回目もトップコンビの感想しか書いてませんね。
他のキャストも素敵でした。
素敵でしたが、センターの磁力が凄かった。
花組らしい華やかで絢爛たるトップコンビ爆誕!
しかも舞台技術レベルも高め安定でバランスとれてて。
これはもうクガタチ成功レベル…!
♪奇跡だ、奇跡だーー♪
(邪馬台国の風より)
※ちょこっと解説
クガタチは古代の罪過判定方法。
熱湯に手を突っ込み、罪人は火傷するが、無罪なら火傷しない。
タケヒコ(明日海りお)は火傷せず、無罪放免。
…てか、火傷しない事に「奇跡だ、奇跡だ」と騒ぐって事はですよ?
罪の有無以前に、熱湯で火傷するのが当たり前と皆、知ってるやん。
裏返せば、それくらいあり得ない事。
全方位のレベルが揃い、バランスのとれたトップコンビ。
それは生まれそうで、なかなか生まれない存在。
そんなトップコンビの誕生に立ちあえて、嬉しいです。
…それにしても。
『ドン・ジュアン』を観ながら、CASANOVAやクガタチを思い出す私って一体。
…ま、ええか、どれも花組作品やし。
(ええんかい?)
▽ つづきます