2022年4月23日(土)24日(日)星組『めぐり会いは再び next generation』『Gran Cantante』を観て参りました。
雪組『夢介千両みやげ』に続き、ライトコメディ路線の芝居と、熱いショー作品。
宝塚だから成し得る世界観だな、と感じました。
ライト感覚だからと侮るなかれ。
スタッフは精鋭揃いです。
演出は芝居もショーも主力級を投入。
ときめきの魔法使い・小柳奈穂子(めぐり会いは再び)
ショーの王様・藤井大介(Gran Cantante)
衣装も主力級。
エレガンスの帝王・有村淳(めぐり会いは再び)
色彩の妖精・加藤真美(Gran Cantante)
振付も御織ゆみ乃、若央りさ、AYAKO、百花沙里、平澤智。
THE 宝塚と新しい息吹がミックスした顔ぶれ。
美術がまた素敵でした。
レグルス・バートル探偵事務所は、ヨーロッパの絵本の挿絵そのもの。
あるいは『ハリー・ポッター』等のファンタジー映画のよう。
とても素敵なセットです。
2016雪『私立探偵ケイレブ・ハント』
2017花『ハンナのお花屋さん』
2018雪『ファントム』
2019雪『20世紀号に乗って』
2019花『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』
2019星『龍の宮物語』
2020雪『Once Upon A Time in America』
2020宙『アナスタシア』
2022花『元禄バロックロック』
…等、好きなセットがいろいろ思い浮かびました。
ファントムは映像との併せ技
龍の宮物語は照明との併せ技(幽玄の世界)
…という要素も大きいですね。
レグルス探偵事務所は、レグルス(瀬央ゆりあ)が父から受け継ぎました。
よく言えば由緒ある…けれど、隙間風が冷たいオンボロ事務所。
親友のルーチェ(礼真琴)が居候に。
劇作家の卵・セシル(天華えま)も住み着きます。
さらに発明家の卵・アニス(水乃ゆり)は実験室代わりに。
女優の卵・ティア(有沙瞳)もレッスン場代わりに?
大学の同窓生5人が、卒業後も屯しているレグルス探偵事務所。
レグルスは口では文句を言いつつ、彼らを受け容れています。
居心地が良さそうな部屋。
この美術が本当に素晴らしくて。
いろーんな物が雑多に配置されているようで、絶妙な癒し空間になっています。
すきま風どころか、温かいヒーターか温風を感じます。
5人で歌い踊るナンバーも軽快で楽しい。
本作で最も好きな場かもしれません、ワタシ的に。
大学卒業後も定職に就かない4人。
夢を追いかけたり(有沙、天華、水乃)+模索中(礼)
(レグルス瀬央は探偵業を継ぎ、地道にチワワを探してます)
やや自虐的にモラトリアムと表現してます。
そうか、これがモラトリアムなのか。
そりゃこんなに居心地が良ければ、ずっといたくなりますって。
思えば、学校や会社など、常に何かに所属してきたなぁ。
でも、それを自立というのかな?
どこかに所属し、身分を証明してもらう事が当然になっていたけれど。
裏返せばそれは、退職したら私を証明してくれるものは………マイナンバーカード?
あって良かった、マイナンバー♡
…じゃなくて。
あらためて考えてみると、己が真の意味で自主独立(自立)してる気がしません。
「私はこれがしたい!」と突き進むこと。
日々の糧を得ること。
(できれば安定して)
これらは両立が難しいことも多い。
手堅く「生活する」ため、現実と対峙すること。
それは多くの場合、賢明で理知的な選択といえるでしょう。
とはいえ、「安定した職に就いてる=自立」とも限らない気がします、改めて。
先日、ネットでとある記事を読みました。
60歳を過ぎてから性別適合手術を受け、女性として生き始めた方が紹介されていました。
ずっと違和感を覚えながらも、結婚・育児・家族を扶養。
会社の仕事も務め上げ、退職後はPC教室の講師をされているとか。
彼女が生きてきた『時代』は「男と女が結婚し、子を生み育てる」事が「当たり前」で「幸福」
違和感を抱えながら、当時の彼女は「女性と結婚し、子を育てて」来たそう。
本来の性に戻りたい気持ちが止み難く。
男として、親として、会社員として…様々な義務を完了。
今、ようやく「女性に戻れた」そうです。
自分が本当にしたい事を、若い頃からストレートに追いかけるか。
現実的に堅実に生きたのち、本当にしたい事を手掛けるか。
あるいは諦めたり、我慢したり…。
(これが最もメジャーな選択肢かもしれませんね)
いろんな選択肢がありますね。
どれを選んでも良いと思います。
飛び出してもいい。
諦めてもいい。
もし正解があるとすれば、それは『自分が決めた(受け容れた)』と思えるか。
その一点に尽きると、私は思います。
…と、作品感想から逸れちゃいましたね。
小柳先生が作中に「モラトリアム」というキイワードを出されてて。
最後は一人一人が己なりの決断をしていきます。
ライトコメディですが、とても大切な事が描かれているような気がして。
敢えて、深読みしてみました。
多分、ここまで深刻に深堀りされるとは、小柳先生もお考えではないでしょう。
初日の小柳先生は桜色の和服を召されていて、とても素敵でした。
初日はアクシデントがあり、劇場改札を通ったのは開演10分前。
改札脇に立っておられた小柳先生に、
「小柳先生、今日はとても楽しみにしています!」
と言い捨て、走り去りま…(オイ!)
すすす、すみません…。
二階席だったもので…。
「なら言うなよ」って話ですが、好きは伝えられる時に伝えるべし。
(上田久美子先生の退団に学んだ教訓)
驚きつつ、笑顔で応えて下さった小柳先生。
ありがとうございました。
(そして、失礼をお許し下さい…)
ちなみに私は、社会人の皮を被ったモラトリアム…なんだろうなぁ。
地道にお勤めしていますが、色んな事を延々とためらい、結局何もして来なかった気がします。
表面的にはそう見えずとも、実質モラトリアムなんやろね。
(何十年モラトリアムってんねん?)
∇ベテラン・モラトリアム(自慢にならん)