2022年3月25日(金)27日(日)花組『冬霞の巴里』を観劇しました。
見応え、聴き応えのある舞台でした。
永久輝さんに続き、キャスト別感想。
ネタバレも含まれますので、まだ知りたくない方は読まれない方がいいかも。
★星空美咲(105期・研3)
オクターヴ(永久輝せあ)の姉・アンブル。
父の自死に不審を抱き、叔父と母への復讐を誓いあう姉弟。
アンブルは歌手として舞台に立ちながら、観客として訪れたある男と接触。
その男は、父殺しに加担した疑惑が濃厚な成金ブルジョワ。
父の為…というより弟の為、愛嬌をふりまき、男の気を惹くアンブル。
幼くして父を亡くし、母から冷遇される弟・オクターヴ。
少女時代からアンブルは弟に寄り添い、精一杯の愛を注ぎました。
成人後も、より深い愛情をオクターヴへ注ぎ続けるアンブル。
アンブルにとって復讐は、オクターヴと繋がり続けるための手段・口実かもしれません。
オクターヴもまた、そうなのでは…と。
互いに結託することで、一緒にいられるから。
少年時代のオクターヴは「叔父と母の企み」を耳にしても、それを認めようとしませんでした。
少年オクターヴにとって、ギョーム(飛龍つかさ)は優しい叔父。
回想の中のクロエ(紫門ゆりや)も、オクターヴの誕生会を開いてくれました。
同時に、クロエを「己に触れてくれない、冷たい母親」として思い出すオクターヴ。
そんな時はいつも、アンブルが抱きしめてくれました…。
少女時代からずっと、オクターヴの姉であり、母で在り続けたアンブル。
深い愛情を注ぎ続けた包容力。
歳が近く、まだ若いアンブルは、オクターヴの真意を図りかね、感情的になる事も。
そうだとしても、決してオクターヴを見捨てず、常に選択肢の最優先に置きます。
母性愛もさることながら、枠を超えた深い愛と慈しみと情熱を備えたアンブル。
「まだ未成熟ながら、愛情深い女性」像を、瑞々しく骨太に演じていたと思います。
骨太というと男性的に感じるかもしれませんね。
ですが、母や姉としての強さは大地や太陽にも喩えられますので。
天照大神も姉でしたよね。
オクターヴとアンブルは「似てない姉弟」設定。
輪郭や顔立ちは確かに似ていません。
ですが、二人はよく似ています。
舞台上で放つ圧倒的な華。
美の競演。
オクターヴとアンブルが並ぶと、神々しささえ感じます。
造形美はもちろんですが、空気感でしょうか。
二人に通じるものが、確かにそこに在ったかと。
「あぁ、姉弟なんだな」という不思議な説得力に満ちていました。
97期と105期、8年の学年差がある永久輝と星空。
実年齢もほぼ同じくらい離れている事でしょう。
しかし、ちゃんと姉と弟に感じられました。
2歳差くらいのね。
何の不自然さもなく、フィットしていました。
星空美咲は可愛らしい娘役ですが、おそらく心身は強靭なはず。
研2の頃から、無茶振りに次ぐ無茶振りに応えてきました。
しかも、予想を大きく上回る形で。
本作でも、期待を上回る役者ぶり、歌い手ぶり、踊り手ぶり。
オリジナル作品の楽曲は、生徒の音域に合わせて調整可能。
それゆえ、娘役も地声で歌える曲が多かったりします。
…が、しかし。
本作で星空に振られた楽曲は、高音祭り。
転調もあり、地声からファルセットへの切替も。
星空はなかなかの難曲を、豊かな声量で歌い切りました。
歌える生徒でしたが、一段とパワーアップ。
高音をクリアに歌い上げられる娘役は貴重。
花組なら、音くり寿、咲乃深音、若草萌香が浮かびます。
そこに星空美咲が加わり、戦力増強。
愛蘭みこも粗削りながら、充分期待できそう。
ダンスもかっこいい。
美咲ちゃんのダンスは、日本刀がしなるよう。
ダンスに限らず、黙って立ってると武士の風情を感じます。
アンブルを演じるにあたり、持ち前の芯の強さが役立っていそう。
フィナーレでは、希波らいと、次いで永久輝せあと組んで踊りました。
希波くんとも楽しそうに踊ってました。
永久輝さんとのデュエットダンスは美の競演・おかわり。
空気感がしっくり合う二人でした。
永久輝せあ First Photo Book に美咲ちゃんも呼んでほしかった…!
きっと似合っていたことでしょう。
『冬霞の巴里』は永久輝せあの代表作になるでしょう。
同時に、星空美咲にとってもそうだろうと。
姉弟役ですが、アンブルは確かにヒロインでした。
恋愛要素をほぼ除しながら、こんなにも切なく狂おしく ときめくものかと。
表現力の幅が広がり、柔らかさと厚みを感じる美咲ちゃん。
改めて、お誕生日(3/25初日)おめでとうございました。
∇実質ヒロイン・星空美咲