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珠城りょう率いる月組全国ツアーチームの底力

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珠城りょう&愛希れいか主演全国ツアー『激情/アパショナード』初日から一夜明けて。
感想の追加補足です。

正直、期待を軽く上回ってくれました。
芝居もショーもダレる隙なく、見応え・聴き応えの連続。

…あれ?
これ、トップ・プレお披露目公演…?

…と錯覚しそうでした。
それほど真ん中が似合ってたし、ちゃぴとの並びも違和感がなく自然でした。

相手役を輝かせる天性の才能を持つ、咲妃みゆの男性版……違った、男役版ですね、たまきちは。

たまきちと並ぶと、娘役はもちろん、女装した男役も、華奢で可憐で愛らしく見えます。
前からその傾向は見え隠れしてましたが、今回は本当に凄かった…。
食い散らかすのとは異なる、こういうタラし方もあるのか…という。

早乙女わかばちゃんとの並びは、2015年2月『Bandito』以来かと。
『Bandito』では恋愛要素が薄い事もあり、「美男美女だな」
フィナーレのデュエダンも「軽々と高速回転リフトするなぁ」といった印象でした。

当時は、珠城りょうと早乙女わかばの間に Love や甘やかさをあまり感じませんでした。
それは、脚本や演出のためだと思っていました。
同時に、珠城りょうを淡白でストイックだと感じてもいました。

今回の『激情』のホセ(珠城)は、『Bandito』の頃とは大きな変化を感じました。
「作品が違うから、当たり前」という見方もありますが、演じ方が違って見えました。

カルメン(愛希)に惹かれつつ、ミカエラ(早乙女)への情も色濃く残すホセ。
カルメンへの物狂おしい恋心とは別に、ミカエラの事も愛しく感じている。
その異なる種類の、されど愛す可し気持ちを、珠城りょうは演じ分けていました。

いつから、そんな繊細なお芝居をするようになったのかと、正直なところ、驚いています。

そして、共演者への愛をものすごく感じました。
カルメンやミカエラへは無論、ショーで絡む娘役や、お花ちゃん達へ。
相手へ向けるまなざしが、「愛しくてたまらない」と語りかけるようで。

たまきちが誰かにまなざしを向けるたび、その優しさに驚きを禁じ得ませんでした。
たまきちって、こんなに愛を振りまく人だっけ?

禁欲的で、黙々、淡々とした印象がありました、たまきちには。
何かを抑え込み、歯を食いしばり、耐えているような。
そこがまた、珠城りょうの魅力の一つでもありますが。

今回の芝居とショーでは、あらゆる感情を解き放ち、特にショーでは共演者へ、観客へ、惜しみなく愛を降り注いでいました。

主演という立場。
次期トップという立場。
それらが責任と覚悟を生み、萎縮するどころか、むしろ何か解き放たれた印象を持ちました。

私の知らない珠城りょうが、そこにいました。
…いえ、見せていなかった…あるいは見えにくかっただけで、これもまた珠城りょう。

二番手時代が短くて勿体ない、気の毒だと思っていましたが、あんなに堂々と主演を張り、カンパニーを率いるなら、大丈夫じゃないかな。

朝夏まなとさんも二番手経験ほぼ無しで、集客力を不安視されての船出でした。
しかしながら、トップになられてから、生き生きと魅力を増し、注目と評価と人気をぐんぐん高めて来られました。
トップ娘役・実咲凛音さんとも相性抜群で、トップコンビとしてのお似合い度は5組中でも一、二を争うのではないかと。

珠城さんには、朝夏さんに通じるものを感じる事がチラホラありました。
その一つが「相手役を選ばない」こと。
ただ、朝夏さんほどの度量は感じなかったのです、まだ。

ところが、今回の舞台では、ちゃぴを筆頭にカンパニー全員を包み込むような空気感を醸し出してる…そう感じました。
…あ、これって、もしかして……包容力というものだ。

瞳を交わす相手を、ものすごく愛おしげに見つめるんですよね、たまきち。
特にそれを感じたのが、ショーで蘭の花を演じる凪七瑠海とのデュエットダンス。

かちゃを本当に愛しげに見つめながら踊るんです。
生物の世界で、ダンスは求愛方法として生まれたと言われますが、うん、確かに求愛ですね。

芝居の方でも、ちゃぴカルメンと非常に濃厚な絡みがありましたが。
かちゃとのデュエダンは、それを上回る色香と熱を感じました。

演出としては、カルメンとの濡場の方がエロいんだと思います。
ですが、ショーでのたまかちゃの艶っぽさは断トツでした。

たまきちの武骨さと、かちゃの妖艶さの組合せ……凄かった。
これもまた、大型カップルといえましょう。

今回の全国ツアー作品に於いて、凪七瑠海さんの存在意義はとても大きい。
彼女は89期の首席として知られてますが、そのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮しています。
芝居でも、ショーでも、「…こんなに上手い人なのか」と今更ながら、確かな実力と、様々に演じ分ける巧みさに圧倒されました。

主要キャストのみならず、出演者全員の気迫を感じました。
ものすごく伝わってきました、真剣さが。
集中力の高さが、開演してから幕が下りるまで、ビシバシと。

それを如実に感じたのが、黒燕尾。
揃ってるんです、綺麗に。

月組の黒燕尾は、ジャズみたいな印象がありました。
大きくは同調しつつ、個々にアレンジを効かせる…と言いますか。

大きくは一致してるけれど、多少の振り幅は個性や魅力として認めるような趣きを感じていました。
それが、なんだか綺麗に揃って見えたんですが、気のせい…ではないよね?

宝塚に於ける群舞の本質は、揃えること。
個性を消し、すみずみまで細かい角度に至るまで揃えること。

そういう談話を、振付師と生徒の対談で拝見した記憶があります。
(お借りした過去のスカステ録画DVDで拝見しました)

今回の月組全国ツアーチームは、基本に回帰する事を意識しているのかな?…と感じました。
大階段がないことが残念なくらい、スタンダードな黒燕尾だと思います。

『アパショナード』は本当に満足度の高いショーですね。
敢えて残念な点を申し上げれば、たまきちのお花ちゃんが見られなかったこと。

『Dragon Night』でウンディーネ珠城を観ておいて良かった。
ウンディーネ珠城は、女装した娘役でも襲う側に見えましたが。

今回、芝居でも、ショーでも、男としてガンガン攻めてます。
特にどちらが…ではなく、どちらも見応えあります。

「月組の回し者」と言われてもいい。
今の珠城りょう、彼が率いる全国ツアーチーム、観て損はなし!です。



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