コロナ禍での心配は枚挙にいとまがありませんが、最も気掛かりなのは
『若手の育成』
新人公演が中止され、はや1年が経とうとしています。
劇団さんもいろいろ模索してくれていますが、気がつけば、
「とりあえず、経験者で補っておこう」みたいな、上級生重用が目立つような。
努力と経験の積み重ねが陽の目を浴びる姿は、外側から見ていても嬉しくなります。
ただ、下級生時代から充分にピックアップされてきた生徒に集中すると、
「他の生徒にもチャンスを…」
というジレンマに駆られます。
ごめんね、ワガママで。
今日はここ数年の新人公演を振り返り、各組の育成計画について想いを馳せようかと。
上演年は、宝塚大劇場ベース。
学年は、大劇場公演の初日時点が基準です。
まずは花組。
数年のつもりが、10年振り返ることに。
整理も兼ねて、色分けしてみました。
青=のちに花組トップ男役就任
赤=のちに花組トップ娘役就任(退団済を含む)
緑=他組へ輸出されたトップ路線男役
紫=他組へ輸出されてトップ娘役就任(退団済を含む)
橙=他組へ異動
茶=退団済(トップ就任せず)
1)蘭寿とむ&蘭乃はな時代
2011年06-09月『ファントム』
鳳真由(91期・研7)
実咲凛音(95期・研3)
2012年01-03月『復活』
鳳真由(91期・研7)
実咲凛音(95期・研3)
2012年07-10月『サン=テグジュベリ』
芹香斗亜(93期・研6)
春妃うらら(97期・研2)
2013年02-05月『オーシャンズ11』
芹香斗亜(93期・研6)
桜咲彩花(93期・研6)
2013年08-11月『愛と革命の詩』
芹香斗亜(93期・研7)
朝月希和(96期・研4)
2014年02-05月『ラスト・タイクーン』
柚香光(95期・研5)
華雅りりか(94期・研6)
2)明日海りお&蘭乃はな時代
2014年08-11月『エリザベート』
柚香光(95期・研6)
花乃まりあ(96期・研5)
3)明日海りお&花乃まりあ時代
2015年03-06月『カリスタの海に抱かれて』
水美舞斗(95期・研6)
城妃美伶(97期・研4)
2015年10-12月『新源氏物語』
柚香光(95期・研7)
朝月希和(96期・研6)
2016年04-07月『ME AND MY GIRL』Wキャスト
優波慧(96期・研7)
綺城ひか理(97期・研6)
城妃美伶(97期・研6)
音くり寿(100期・研3)
2016年11-02月『金色の砂漠』
綺城ひか理(97期・研6)
城妃美伶(97期・研6)
4)明日海りお&仙名彩世時代
2017年06-08月『邪馬台国の風』
飛龍つかさ(98期・研6)
華優希(100期・研4)
2018年01-03月『ポーの一族』
聖乃あすか(100期・研4)
城妃美伶(97期・研7)
2018年07-10月『MESSIAH』
聖乃あすか(100期・研5)
舞空瞳(102期・研3)
2019年02-04月『CASANOVA』
帆純まひろ(99期・研6)
華優希(100期・研5)
5)明日海りお&華優希時代
2019年08-11月『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』
聖乃あすか(100期・研6)
都姫ここ(104期・研2)
6)柚香光&華優希時代
2020年07-11月『はいからさんが通る』
一之瀬航季(100期・研7)
美羽愛(104期・研3)
…約10年の流れを振り返ってみました。
(対象は蘭寿・明日海・柚香トップ時代)
(それ以前に92期、94期の主演者がいたら、ごめんなさい)
男役は10名。
91期 鳳
92期 -
93期 芹香
94期 -
95期 柚香、水美
96期 優波
97期 綺城
98期 飛龍
99期 帆純
100期 聖乃、一之瀬
うち、トップスター就任1名、柚香光のみ。
娘役は12名
93期 桜咲
94期 華雅
95期 実咲
96期 朝月、花乃
97期 春妃、城妃
98期 -
99期 -
100期 音、華
101期 -
102期 舞空
103期 -
104期 都姫、美羽
うち、自組で生え抜き1名(華)、
輸入組が1名(花乃/宙組より組替)、
輸出組は3名(実咲、朝月、舞空)、
合計5名のトップ娘役を輩出。(就任予定を含む/2021年2月時点
男役は比較的、どの学年でもなるべく1名は主演させてきた模様。
娘役は偏りがありますね。
城妃を集中的にじっくり育成する反面、華と舞空は急ピッチで促成栽培した印象。
城妃は、花乃の後任を想定し、育てていたのでしょうね。
仙名の後任に希望を繋ぐも、さすがに100期生の後任では目がないと判断したのかな。
そんなこんなで、大事に育てたトップ娘役候補も退団を表明。
気がつけば、若手娘役層のヒロイン経験不足が深刻化。
そこで、急いで若い学年を抜擢し始めたところ、コロナ禍でまさかの新公中止。
人事計画は狂うこともあります。
人がする事ですもの、トライ&エラーの繰り返しでも不思議はない。
聖乃あすか主演バウホール公演で、星空美咲(105期・研2)のヒロイン抜擢は英断。
新人公演の代わりに、下級生に舞台経験を積ませる機会は必須ですから。
こういう成功例も生まれています。
恐れず、若手育成案を練って頂きたいです。
先日発表された『星風まどか、花組トップ娘役就任』は、娘役育成にプラスに働くはず。
舞台技術のクオリティが全体的に高く、バランスがとれた星風まどか。
後進にとって、お手本や目標になる娘役さんだと思います。
また、同世代にとっても刺激になる存在かと。
久々に発生したスライド人事。
衝撃が走りましたが、誰より衝撃を受けたのは星風まどか本人でしょう。
周囲の方々が好意的に受けとめ、快く見送り、そして受け容れて下さいますように。
さて、男役の話に移りましょう。
男役の道のりはロングスパン。
ですが、比較的初期から絞り込んで育成している事象がくっきり出ていますね。
ただ、タカラジェンヌに限らず、若い頃に人気が出るタイプと、年齢を重ねるほど味わいが出てくるタイプがいます。
特に男役は、大人の色香が重要。
新公を卒業してから、ぐんぐん魅力が増す人もいます。
例えば、鳳月杏。
鳳月は(明日海りおの支えとして)研10で、月組から花組へ組替。
月組時代は「手堅い脇役」との印象でしたが、花組で抜擢を受ける内に、どんどん色香ダダ漏れの危険な男役に成長。
2番手(柚香光)と共に、トップ(明日海)と役替わりも果たしました。
現在は月組に戻り、トップ(珠城りょう)を2番手(月城かなと)と共に支える3番手を務める鳳月杏。
人気・実力ともに、月組を支える重要な柱。
宝塚独自のスターシステムを知らない人には、不思議に映るでしょうね。
ちなつさんがトップスター候補ではない事が。
そして、宝塚をある程度、見守ってきた人は知っています。
時間をかけ、手順を踏み、経験を積ませ、育てること。
それは、トップスターの重責を年単位で背負うための鍛錬なのだと。
鳳月に限らず、遅咲きスターは過去にもいたし、今後も出てくるでしょう。
トップ育成のセオリーや重要性は、熱心な宝塚ファンはもちろん、おそらく生徒当人が誰よりも理解していると思います。
だからといって、「無理」と決めつけるのも勿体ない話です。
可能性はあるのですから。
新人公演の主演経験にこだわらず、人気や実力が抜きん出てくれば、その時点でトップ路線を狙えるチャンスやルートを生み出す事。
それは、宝塚歌劇をさらに100年生かすための課題かもしれません。
▽人財育成は大切ですね