縣千を初めて認識したのは、昨年の今頃でした。
なにげなく手にとった音楽学校の文化祭パンフレット。
そこに掲載されていた、ちさとさんの写真に目を奪われました。
しっかりした面構えだな、と。
シュッとして、どっしりした、骨太な男役になりそうな。
その後、ちさとさんは「縣千」と名乗ることに。
渋いなぁ、オリジナルだなぁ。
面構えに合ってるやん。
この1年、縣くんの初舞台から本日の新人公演まで、可能な限りチェック。
ダンスが得意な事はわかりました。
でも、声や歌唱力、演技については未知数でした。
2015年秋の全国ツアーで、歌唱力と演技については片鱗は見え隠れしましたが。
前置きが長くなりました。
新人公演の話に移りましょう。
縣千に感じた予感。
期待はしてました。
……でもね。
予想を大きく上回りました。
縣千が研究科1年だと知らなければ、長の学年だと思うかもしれない。
立ち姿が実に堂々として、存在感がある。
臆することなく、舞台度胸がある。
そして、声。
縣千は、声がすごく良い。
耳に心地良い、澄み切った男役声。
しかも、朗々と響きわたる。
多少の雑音には負けない、よく通る声。
普通、低い声は掠れたり、くぐもり易い。
縣千の声は、低音が澄み切って、しかも響き渡る。
低音があんなに澄んで響くなんて、これはもう「宝物を持って生まれた」としか言いようがない。
低音は、高音とは異なり、努力では出せません。
厚く長い声帯がなければ、低音を出す事はできないそうです。
努力では、声帯に厚みをつけたり、伸ばしたりできません。
そもそも、声帯は見えないし。
努力である程度、低音ボイスが出るようになった人は、そこそこの厚みと長さがもともとあったのでしょうね。
縣さんのように透明感があり、伸びやかな低音が美しく響く男役声は、本当に本当に貴重。
…って、学生時代に師事した声楽の先生の受け売りですが。
コーラス部で指導して下さった先生です。
個人指導もしてらして、ジェンヌさんもいらしたような…微かな記憶ですが。
縣くんに話を戻します。
歌は激しく動きながらだと、やや不安定になる箇所もありました。
ですが、筋力をつければ充分、克服できるでしょう。
あとは場慣れかな?
歌唱力は高く、とにかく声が良い。
滑舌も良く、セリフが聴き取りやすく、とにかく声が良い。
とにかく、声が良いんですよね。
あのほわほわした話し声のどこから、蒼紫の男前声が出るのか…。
ギャップ凄すぎ。
縣千の声は、若さと青さがあり、がっつり低音ではありません。
例えば、柚希礼音さんのような THE 低音ボイスではありません。
ですが、男役として充分通用するレベルのアルトだと思います。
蒼紫は「無表情」がデフォルトですが、視線の動かし方や顎の反らし方など、細かい動きを工夫してました。
冷徹な中に抑えがたい熱を秘めている、そんな風情でした。
他にも、例えば武田観柳が蒼紫を虚仮にする場面では、無表情なのに微かに呆れた感じが滲み出てたような。
観柳の声に振り向き、とりあえず目線を向けるも、口許は引き締まってるから無反応にも見えて。
あの「心の中で溜息 & やや呆れ & 軽く流す」感じ。
あれは、観柳役(橘幸)の大袈裟なコメディ演技と、蒼紫(縣千)の最低限に抑えた演技の組合せの成果でしょう。
橘さんの武田観柳との相乗効果。
「舞台は皆で創るもの」と言いますが、本当に…。
クールビューティ蒼紫。
表情自体はずっと変わらないのに、立ち方や声音、目線などの微細な動き、振り向き方…。
無表情ながらも傲岸不遜に見えたり、葛藤が見え隠れしたり、真摯に見えてきたり…。
……ん?
誰かと重なるような…?
……あ。
……明日海トート…?
…を思い出したのは、流し目と傲岸不遜な顎使いゆえか。
顔の角度が絶妙なんですよね。
くくぅ、うまく言えない…。
私の脳内フィルムを映写できたらいいのに。
縣さんは、こまやかで繊細な演技を組み立てられる人なんですね。
伝わってきましたよ。
身贔屓ではなく、蒼紫の隠された気持ちを、的確に表現していたと思います。
クールで無表情な役だから、「とりあえずカッコ良ければ及第点」と思ってました。
ところがどっこい、でしたなぁ。
(ホント、上から目線でごめんなさい)
御庭番衆とのダンス・フォーメーション、バッチリでした。
蒼紫と御庭番衆、かっこよかったー!
何度でも観たくなる、ダンス&フォーメーション。
縣くんは、身のこなしが惚れぼれするほどエレガント。
激しい立ち回りでも、不思議と余裕があって優雅。
無駄な動きやオーバーアクションがなく、流れるように美しい。
二刀流も、しっかり決まってました。
刀を両手で一本ずつ持ち、それぞれをクルクル回す縣くん。
一本でも難しいのに、二本も。
刀を鞘から抜く様子も、続く立ち回りも、落ち着き払って見えました。
すっごくスピーディですが、慌てず騒がず、冷静で不敵な蒼紫でした。
槍しか持った事がなくて(星逢一夜)、刀は初めてだそうな。
それがいきなり、二刀流だもんね。
求められるものが高すぎて、思わず白目剥いても不思議じゃない。
しかも、舞台衣裳はロングコート。
動き辛かったでしょうに。
そう、ロングコート姿、かっこよかったです。
移動するたび、長い裾をはためかしてましたね~。
ビジュアルは和風すっきり系美男子。
基本が無表情なだけに、目線の動かし方が妖しく色っぽい。
表情が無い役って、表情豊かな役より難しいと思います。
ホント、よくここまで創り上げたな、と。
見事な蒼紫ぶりに感嘆しました。
これでまだ研究科1年ですものね。
末恐ろしいとしか言いようがありません。
縣千の四乃森蒼紫役抜擢は、大成功でしょう。
叶う事なら、東京の新人公演も観たくなりました。
まず無理でしょうけど、観れるものなら観たい…。
きっと東京では更にグレードアップしているはず。
ちさとの成長を、お母さんは見守りたいの…!
…欲張りすぎました、ごめんなさい。
本日(日付変わりましたが)、観られて幸せでした。
満足度の高い、雪組『るろうに剣心』新人公演でした。
剣心役の永久輝せあさん、武田観柳の橘幸さんについても触れたいところ。
次回、語らせて下さい。
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恐るべき研1…縣千(雪組『るろうに剣心』新人公演)
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