宝塚の舞台は、奥行きがあって広い。
メインキャスト達は、演出家がしっかり演技をつけてくれるのでしょう。
ですが、舞台の隅や奥にいるモブっ子達は、思い思いに小芝居をしてる。
これが面白いんですよね。
メインキャストの台詞を聴きつつ、目はモブっ子達をガン見する事もしばしば。
「自分で工夫してるんやろな」と思われる、下級生達の小芝居。
ちょっこり、振り返ってみたいと思います。
※「ちょっこり」は明日海語ですが、ご本人もそうそう使われないかと。
★ 縣千 (雪組 101期・研6)
小芝居といえば、この人。
小芝居キング・縣千くん。
近年、本公演でもメインキャストに抜擢され、演出家にお芝居をつけてもらってるだろうけど、縣くんの小芝居は観応えがあります。
なんなら、初舞台からやってたよね、小芝居?
なんで初舞台生が、本公演の芝居に出てるんだ?と驚いたけど。
月組『1789』の三部会のところで。
『幕末太陽傳』新人公演では、二番手役(高杉晋作/本役:望海風斗)に抜擢されながら、お祭りの場では甘酒売りのバイトに精を出していました。
『ファントム』新人公演でも、二番手役(キャリエール/本役:彩風咲奈)に抜擢されながら、広場でピエロのアルバイトで飛ばしてました。
縣くん曰く、「キャリエールはエリックや従者を食べさせるため、大道芸のバイトをしていた。
でも、副業がばれてオペラ座の支配人を解任された」そうな。(雪組トーク・スペシャルより)
『壬生義士伝』本公演では、新撰組の若手(池波六三郎)に抜擢。
新撰組の酒盛りの場で、先輩たちにお酌したり、可愛い娘さんたちにチョッカイかけたり、団子をつまんだり、お酒をねだったり、毎度いろいろやってました。
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の少年時代とか、楽しそうでしたね。
基本的な動きの流れは決まってたんでしょうけど。
少女達のバレエを覗いているドミニク(彩海せら)をどかそうとしたり。
(しかし、どかないドミニク。さりげなく強い)
ヌードルス(望海風斗)に「ねぇねぇ、俺にも見せて」とばかりにチョッカイかけたり。
(しかし、完全にいなされる。ヌードルス、デボラに夢中)
コックアイ(真那春人)には、そもそも相手にされてない。
パッツィ(縣千)、アホの子全開でした。
(褒めてます)
(多分)
お芝居が好きなんでしょうね。
ホント、それは感じます。
生き生きしてます、小芝居しながら。
本公演で大きな役を頂けるようになり、小芝居する機会が減っていくでしょうね。
…いや、縣なら寸暇を惜しんで、小芝居するやろな。
★ 白河りり (月組103期・研4)
りりちゃんは、本公演・別箱とも、まだモブやバイトが多いです。
…が、しかし。
チョロチョロ、工夫しています。
『ON THE TOWN』のナイトクラブでは、一瞬、チップ(暁千星)のお膝に乗って誘惑しますが、可愛い小悪魔ちゃんでした。
何回か観に行くたびに、ちょっとずつ触り方が違いました。
そのままストンと座る事もあれば(梅田初日)、脚をすり寄せたり(2日目)
他にも、ナイトクラブでサンバないでたちの英かおと君とわちゃわちゃしたり。
ウェイターの彩音星凪くんとイチャイチャしたり。
千秋楽では、彩音ウェイターがりりちゃんにキスしたと聞いてます。
前楽でもしてほしかった…!(←前楽観た人)
英くん、彩音くんとの小芝居も、見るたびに変化していました。
裏返せば、演技指導は特になく、自分たちで考えて、ナチュラルなガヤ芝居をしてたんでしょう。
りりちゃんのお芝居で、最初に注目したのは、『エリザベート』本公演でした。
病院訪問の場にて。
エリザベート(愛希れいか)とヴィンディッシュ嬢(海乃美月)の掛け合いが素晴らしく、惹きつけられた場です。
…で、2回目に観た時かな?
私は大抵、B席から観てますので、この時もB席から観てたので…つまり、舞台全体が視界に入っていたので、気づいたのですが。
海乃ヴィンディッシュ嬢と左右対称の動きをしてる人が、舞台の上手側にいました。
それが、入院患者の少女(白河りり)でした。
己がシシィだと信じ込んでいるヴィンディッシュ嬢(海乃美月)
彼女を崇敬と憧れ目線で見上げ、小さな花束を捧げる少女(白河りり)
少女は、ヴィンディッシュ嬢が皇妃エリザベートだと信じ、憧れているんですね。
少なくとも、ヴィンディッシュ嬢を狂女だとは認識していません。
そこへ本物のシシィが慰問に訪れます。
本物のシシィを前に不敬を働くヴィンディッシュ嬢は、警備に取り押さえられました。
現場には緊張が走り、ヴィンディッシュ嬢本人はもちろん、入院患者たちが恐れ、怯えます。
本物のシシィに対して不敬を働き、
ところが、シシィはヴィンディッシュ嬢を優しく抱きしめ、「あなたが羨ましい」と語りかけます。
シシィによって、落ち着きを取り戻したヴィンディッシュ嬢。
シシィから下賜された扇を手に、誇らしげに病室へ戻っていきます。
この時、例の少女はことの成り行きに怯え、耳を塞いでうずくまっています。
2018年・月組エリザベートでも、そこは変わらず。
ただ、私の知る限りですが、白河りりが演じた少女は、ほぼ完全にヴィンディッシュ嬢(海乃美月)の感情と連動していました。
海乃美月が警備に取り押さえられると、白河も頭を抱えて怯えます。
ブルブル全身を震わせて。
愛希シシィに抱きしめられ、海乃美月が惚けたようになり、落ち着きを取り戻し始めるや、白河りりの震えが止まります。
海乃美月の演技に呼応して、白河の演技も変化する。
これはでも、演出家が決めたのではないでしょう。
過去作品の病院訪問の場では、こんな少女を見た記憶がありません。
少なくとも、私は。
更に、初日近くの初見では、白河演じる少女は岩のように固まっていました。
日にちが経つうちに、どんどん演技が変化していくので、病院訪問の場は、白河りりの観察にシフトしたほどです。
この少女役は、入院患者の一人。
ヴィンディッシュ嬢に花を渡す以外は、特に目立つ事もなく、名前も台詞もありません。
ほとんどモブです。
その他多勢に近い役を、白河はヴィンディッシュ嬢の心情を映す鏡として演じていました。
もし演出家の指示なく、白河自身が考えた事なら、すごい事です。
そして、おそらく白河自身の判断でしょう。
過去を振り返っても、変化の度合いからも。
どんな役でも大切に、本気で演じているのだと伝わってきました。
この翌年、白河は『IAFA』新公ヒロインに選ばれ、その美声を知られる事になります。
私も白河の一番の魅力は、美声と歌唱力だと思っています。
しかし、役の大小に関係なく、演技や表現を追究する姿勢は、彼女の最高の美徳だと思っています。
…と、他の生徒についても語りたかったけど、昼休みが終わるので、また。
▽ビバ!小芝居!