花組『A Fairy Tale－青い薔薇の精－』感想です。
新人公演に刺激を受けての、本公演の変化について観察日記・その２。
新人公演では主演を務め、本公演では白薔薇の精を演じる聖乃あすか（100期・研６）
白い薔薇の精は、罪を犯す前のピュアだったエリュ。
「気位が高い」という設定を意識してか、無表情になる事も多々あった聖乃さん。
綺麗な顔立ちも手伝って、人形のようでした。
新公のあとも、目立った変化は感じられない…と思ったのですが。
一見、無表情に見える白薔薇さんですが、口角がわずかに上がっているような。
口角が上がっているといっても、笑顔ではないんですよ？
単に口を閉じているのではなく、口元も意識して引き締めているのだ…と感じました。
緊張感がありつつ、ほのかに柔らかい無表情というのかしら？
本役の明日海さんは表情の見え方を、まばたきのタイミングまで計算し尽くしている人。
同じように表情を消していても、考え込んでいるのか、ぼんやりしているのか…等々、意味を持たせています。
聖乃さん演じる白薔薇の精は、台詞が一切なく、動きと表情だけで表現する難役。
青い薔薇のエリュはもちろん、場によってはシャーロットの気持ちも表現する存在。
優雅にふわりと舞いながら、ときめき・喜び・やるせなさ・哀しみ・孤独・絶望などを表現する白薔薇の精霊。
新公を経て、明日海エリュは感情を迸らせるようになりました。
それに合わせて、聖乃さんも…とはいきません。
あくまでも「過去の幻」ですものね。
明日海さんと聖乃さんは、それぞれ「エリュ」を演じています。
それぞれ、異なる方向から「エリュ」像にスポットを当てている感じ。
ですが、違和感はありません。
二人とも本来の持ち味は、中性的な「フェアリータイプ」と呼ばれるジェンヌさん。
…ですが、骨太な正統派男役を目指して来られました。
その効果でしょうか。
二人とも精霊を演じていても、ちゃんと男性に見えるんですよね。
そういえばショーの中詰で、聖乃さんは娘役さんとウィンナワルツを踊っています。
この時のリードの、余裕ある紳士っぷりに驚きました。
トップコンビ（明日海＆華優希）の背後で踊っていたんですね。
気づくのが遅れてごめんね。
聖乃さんは『MESSIAH』新人公演で天草四郎（本役：明日海りお）を演じた時、熱量が高い男らしさをガッツリ表現していました。
今回は一転して、主演といいながら、傍観者のような役まわり。
これはある意味、とんでもない難役です。
感情をぶつけられる役ではない。
動的なエネルギーや、衣装やビジュアルでも、男らしさを表現できない。
青い薔薇の精も、白い薔薇の精も、それは同じく。
学びが大きい役だろうな…と、あらためて感じています。
新人公演では、天城れいん（104期・研２）が白薔薇の精を演じました。
すらりと立ち姿がスタイリッシュで、動きがしなやか。
聖乃さん演じる白薔薇より無機質に感じられました。
精霊としてはアリかもしれませんね。
ただ、大元は明日海りお（89期・研17）が演じるエリュ。
大元のエリュを、どう己の中に取り込むか。
大元のエリュと、どれほど繋がる（リンクする）か。
白薔薇の精は、単独で存在する役ではありません。
青い薔薇の精と調和してこその存在。
青薔薇（明日海）の演技が変われば、白薔薇も呼応する。
新公後は青薔薇（明日海）の体温が上がったようなので、白薔薇（聖乃）も少し感情のメリハリをつけたような気がしました。
幼いシャーロットと共に舞い落ちてくる何かを目で追いかける白薔薇さんがとても好きです。
目を瞠りながら、楽しそうに。
新公後は、さらにはしゃいだ空気になった気がします。
幼いシャーロット（都姫ここ）と二人して嬉しそうに。
愛くるしいですなぁ。
ほんと好き、あの場面。
青薔薇さんの苦悩と葛藤が深まり、表出される熱量が大きくなった分、白薔薇さんが見開く目がまん丸になったような。
白い薔薇はそうそう感情を大きく揺らせない、変えられない事でしょう。
一見するとわからない微細な変化ですが、明日海エリュの演技変化を受け、聖乃さんなりに試行錯誤しているのかな…と感じています。
私の勝手な推測なんですけどね。
柔和で優しげな美貌、気品あふれるロイヤル感。
その持ち味もまた、明日海さんと聖乃さんの共通点。
観る人の心を和ませ、ときめかせるビジュアルや雰囲気は、大きなシャルム（魅力）ですね。
多くのものを教わり、吸収し、いずれ明日海さんのような大輪の花を咲かせますように。
▽君なら、この庭に美しい花を咲かせるだろう
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