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光源氏の魅力

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私が『源氏物語』を初めて読んだのは、小学3年生(8歳)の時です。

学校の図書室で『平家物語』を読み、その面白さにすっかり戦記物にハマった私。
ふと見ると、『源氏物語』が。
「平家が滅亡し、源氏の時代になってからの話ね♡」
ワクワクしながら借りました。

さて、本を開くと……平安時代?
時代が遡ってる…?
しかも、恋愛物??
……お、面白くな…ぃ…(汗)

それが、『源氏物語』との出会いでした。
意味不明なまま読了。
私の中では「つまんない話」枠にイン。
ところが、のちに国語の授業では、世界的名作だと教わりました。

「もしかしたら、私はまだ良さに気づけないだけかもしれない」
「読むタイミングが合わなかったのかも」
「歳を重ねたら、わかるかも」

以来、3~5年に一度は読み返すことに。
ジュニア向け、コミック版、一般向け等々。
その年頃に応じて、体裁は変わりましたが、基本的な内容は同じ。
それでも、なかなか良さがわかりませんでした。

光源氏の魅力に気づくまで、初めて源氏物語と出会ってから、約20年かかりました。

光源氏は、関わった女性をきちんと「女性として遇する」んですね。
そんなの当たり前だろうって?
ノンノン。
日本では「女の価値は若さにあり」が堂々とまかり通ってきました。

その中で、光源氏は例えば「九十九髪」…つまり老婆であっても、それがはずみであれ、乗り掛かった船には、ちゃんと乗り込みます。
しかも、かなり若くやんちゃな頃から。

九十九髪といっても、80~90代の嫗ではなく、おそらく40代位でしょうけど。
平安時代の平均寿命は、30歳前後。
40代まで生き延びれば、立派な長寿ですから。

また光源氏は、律義な男性です。
美人と噂の姫が実は不細工と知り、内心落胆しようと、一度契を結んだら、恋人として生活の面倒をみたり。

光源氏をプレイボーイと呼ぶのは簡単なこと。

でも、カサノバみたいな「女なら誰でもいい」漁色家ではありません。
一人一人に魅力を感じ、口説き落としていきました。

さりとて、ドン・ファンのように口説き落とした途端、興味を失い、冷たくするような事もなく。

真摯に、一人一人に向き合うんですよね。
男と女として。

光源氏は、容姿といい、女性への姿勢といい、 良い意味で女性的だと思います。
女性に寄り添った視点をもっている。

光源氏のモデルは、紫式部の雇用主(藤原道長) という通説が有名ですね。
紫式部が仕えた 彰子中宮の父親が、時の権力者・藤原道長。
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
己は全てを満たしている、と歌を詠むほどの権勢を誇りました。

紫式部は賢い女性です。
おそらく…ですが、表向きそういう事にしておき、世の男性に「こうあってほしい」男性像を描きまくったのではないかと。

「いえ、これはうちのボスがモデルなんですよ。 だって、 素晴らしい殿方ですもの」

こう言われては、プライドが高い男性ほど、 その理想像に己を近づけようとするでしょう。
周囲も、内心では「似てへんやん」と思っても、そんなの言うわけありませんよね。

男性心理を見据え、 藤原道長という当時のビッグスポンサーを背景に、 女性には萌えを、男性には教育をもたらしたのかもしれません。
紫式部、やるなぁ。(←決めつけてるし)

また、光源氏は良い意味で、極めて女性的に描かれています。
その美貌は「女性と見まごうほど」
幼女から老女まで、高貴な未亡人から市井の娘まで、すべからく「女性として手厚く遇する」

気品高く、学識深く、身分も高く… と見上げる立場の方と思いきや。
幼児期に母と死別し、高貴な血統ながら家臣に落とされ…。
「お可哀想…」と母性本能とくすぐられる、胸きゅんポイントも備えた公達。

女性が、男性に「かくあってほしい」と夢見る設定を、これでもか、 これでもかと詰め込んだキャラクターですね。

…でね。
これ…なんか、どこかで見覚えがありませんか?
「こんな男性いるわけないじゃん」と思うような、 夢々しく麗しい男性。
あらゆる面で、あり得ないほど理想的な出来杉くん。

そう、宝塚の男役です。
紫式部が創造した光源氏は、宝塚の男役(=理想の男性像) の先駆けだと思うんですよね。

私は光源氏を、いわゆるプレイボーイだと思っていません。
ご縁があった女性に愛をふりまき、情を注ぐ人だと感じています。
情愛が深く、女性を対等な存在として尊重し、 大切にしてくれる男性は貴重です。

そういう男性は、一人の女性が独占したら勿体ない。
可能な限り多くの女性に、幸福感やときめきを味あわせたらいいじゃない。

そういう男性の存在を知った女性が、息子を育てる過程で、 彼の人の姿を投影するでしょう。
母親の影響って、大きいですからね。

汝鳥さん演じる桐壺帝も仰ってましたよね。
「男が真心をこめて女性を愛したら、女性は心開く」と。

二人の母(桐壷更衣、藤壺女御)に愛された光源氏は、女性を深く敬愛する男性に成長しました。
光源氏に愛された女性もまた、男性への深い愛情と尊敬をおぼえたことでしょう。

互いに尊重しあい、慕い合える関係性。
それが、ごく短い期間だとしても、そういう経験や思い出を持つ事ができた人は幸せだと思うのです。

多くの女性に愛を振りまき、ひとときの夢を魅せてくれる光源氏。
物語で、舞台で、はたまた現実社会で(そんな人がいれば)自由に羽ばたいてもらいましょう。


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