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雪組『凱旋門』新人公演を観て(上田久美子、縣千)

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2018年6月26日(火)雪組『凱旋門』新人公演を観てまいりました。

出演者・スタッフの皆様、お疲れ様でございました。
指導して下さった上級生の方々、ありがとうございました。
(立ち位置…)

はい。 では、感想へ移ります。
まずは、この方から。

★演出・新人公演担当:上田久美子

縣くんの開演アナウンスで『演出、新人公演担当・上田久美子』と流れた瞬間、

「同姓同名の新人さん、入った……?」

いいえ、違うでしょう。
あの、上田久美子先生でしょう。

いまや、宝塚の看板作家の上田先生が、よもや新人公演を担当されるとは。
凱旋門、どんだけ力入れてるの…!

思えば、上田久美子先生の大劇場デビューは雪組『星逢一夜』でしたね。
それは奇しくも、縣千の組配属して第1作目(新人公演も第1作目)でした。

『凱旋門』新人公演は見事なまでに、本公演をなぞっていました。
柴田先生・謝先生のお創りになられた世界観はそのままに、こっそりと梃入れをされていました。

凱旋門は、ほぼ毎週(B席で)観ております。
次はこう来る、あそこであぁなる…と分かる訳ですよ。
それは基本的に変わりなく。

では、どこが違うのか?

まず、表情と抑揚かな…と思いました。

上田先生が得意とされる、深い感情表現。
それが生きていました。

台詞は全く同じです。
ですが、例えばポリス(綾凰華)に図星を指されると、ラヴィック(縣千)は笑みを浮かべます。

浮かべた笑みを消す時、バツが悪そうなニュアンスを混ぜ込む。

それで、「あぁ、ラヴィックは嘘をついてるんだな」と伝わります。

笑みの崩し方が絶妙。
これはきっと、上田先生のご指導に相違ないと思っています。

先の例は、カフェで「悪徳産婆から料金を取り戻したよ」と娼婦にお金を渡した後の、ボリスとのやりとりです。

これは一例で、そういう濃やかな演出が、各所にちりばめられていました。

あらゆる場面で、微妙な表情や、台詞の言い回しなどを通して、「登場人物の気持ち」がビンビン伝わってきました。

最後にラヴィックが去り行くシーンで、死んだ筈のジョアンや収容所送りになる人々が後方でせり上がり、見送る人々に加わっていたり、心憎い。

出演人数が少ない新人公演では、収容所送りの人々をラヴィックと共に去らせては、舞台が淋しくなりますものね。

郷愁を醸し出しつつ、人数を増やす、一石二鳥の演出です。

上田先生の演出は、本公演を尊重しつつ、「より解りやすく気持ちを届ける」事を重視していたと思います。


★ラヴィック(縣千/101期・研4)

開演前、私は初めて小林一三翁の像に手を合わせました。
(僭越ながら、新人公演を見守って下さいと…)

それで気づいたのですが、銅像を拝むと小林一三翁の目と合うんですね。
不思議と落ち着いた気持ちになれました。
(私が落ち着けても…(^◇^;))

会場に入ると、座席に縣くんの顔写真のプログラムが…!
予想以上のインパクトに胸熱。

もちろん、開演アナウンスも縣千。
想像以上に低い声でした。

轟悠さんよりは高いですが。
(轟さんは凱旋門出演者の誰より低音ヴォイス)

メディアで聴く声はけっこう高いので、意外でした。(いにしえ逍遥など)

お芝居の声も、時折カズノ・ハマー系(私立探偵ケイレブ・ハント)が混ざるものの、今までになく低く落ち着いていました。

滑舌が良く、低くてもよく響く声で、台詞が聴き取りやすい。

抑えていても、感情がスムーズにこちらに流れてくる。
心の声が耳元で囁くような。

なんだろう、伏せてるのに、抑えてるのに、ビシバシ伝わってくるんですよ。
ラヴィックという、荒ぶる魂が。

ラヴィック役は、予想を上回る出来だったと思います。

居住まいが、落ち着き払っていました。
同時に、どこか不器用さ・実直さも滲み出ていて。

燃えたぎる情熱を内に秘めた、危うさが滲むラヴィック。

スーツが似合う。
大人の男性に見える。

鼻が高く、横顔が端正。
骨太で硬質な持ち味なので、ドイツ人のイメージに合う。

身体も大きめですが、手が…!
手が大きく、指が長く、男性的。

女性をエスコートしたり、手を挙げてボーイを呼んだり、手術着で手袋をはめたり。

極め付けは、ジョアン(潤花)の頬を包み込んでキスする時。
手が大きいので、ジョアンの顔がすっぽり隠れてしまうのね。

凱旋門はキスシーンが比較的多く、しかも隠さないキスもあるので、本当にしてるように見えるキスもあります。
お稽古を重ねたんでしょうね。

演技は…想像以上に、緻密で繊細。
心情がスムーズに伝わってきました。

暗転して捌ける時も、走り方が下級生走りではなくなりました。
登場して来る時と同じような、颯爽とした走り方。
(めっちゃ後方席からオペラで見てたので、幻だったらごめんなさい)

課題は歌ですが、音程はほぼ正確だったと思います。
音のひっくり返り・掠れ等はなく、丁寧に歌い上げていました。

カーテンコールの幕が上がるや、潤んだ目を必死で開けている姿が。

主演挨拶は、明日海りおさんを彷彿とさせました。

前半は、しっかりハキハキ。 
事前に机に向かい、文章に起こしてきたのでしょう。

後半は、笑いの渦が何度も起こりました。

決して笑いを取ろうとしたり、受けようとしての事ではありません。

本人はそのとき芽生えた気持ちを表現しようと、より的確な言葉を真剣に探していました。

その懸命さとオリジナリティが、笑いのツボを押すんです。

微笑ましいやら、芝居とのギャップやらで。

あんなに笑いが起こる舞台挨拶は、なかなか貴重。
しかも、単に爆笑だけではなく、クスクス笑いやどよめき笑いが起こるんですよ。

少し前まで、落ち着いた、渋ささえ感じる大人の男性だったのに、手までピヨピヨ。

(あの、大人の男の色気を醸し出しまくってた手が…!)

目は潤んでいたし、途中で涙ぐみそうになりつつ、懸命に「今の気持ち」を伝えようとしてくれました。

主演の舞台に立ち、どれほど皆に支えられているか、皆で創り上げているか、実感し、感謝しているそうです。

丁寧で、真剣で、気迫と熱がみなぎる演技。

そして、温かさと笑いがこもったご挨拶。

演技といい、ご挨拶といい、明日海さんの後継者は、縣くんかもしれません。


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