2018年3月25日(日)花組『ポーの一族』東京公演・千秋楽ライブビューイング思い出しメモ(その2)です。
曖昧な記憶に基づいており、科白はニュアンスです。
印象に残った事に触れながら…のため、順番など前後すると思います。
記憶違いがありましたら、どうぞご容赦下さい。
ご挨拶の最初から、明日海さんが感極まった様子で、終始目を潤ませていた事が、とても印象に残っています。
感想その1では、飛鳥裕さんはじめ退団者に絡めた印象をメインに書きました。
それに加え…『絶大なプレッシャー』が圧し掛かっていたのだろうな、と。
期待を寄せられ、褒められるほどに、「観に来られた方々の誰一人をもガッカリさせてはならない」という悲壮な使命感を帯びていた事と思います。
個人のSNSや口コミを含めた、あらゆるメディアで激賞されるほどに、日毎に重みを増していった事でしょう。
それが想像できるだけに、だんだん何も触れられなくなりました。
私一人が黙ったところで、何の力にもなれないと判っていても。
明日海さんの心の琴線は、毎日ピーンと張り詰めていたんでしょうね。
限界まで。
千秋楽のパレードを終え、卒業生の挨拶を見守りながら、どんどん様々な想いが押し寄せてきたのだろうなぁ…と想像していました。
もちろん、胸の内は明日海さんご本人にしか解りませんが…。
「もう明日から、エドガーを演じる事はない」という事を、
「エドガーを一人ぽっちにしてしまう」
と表現した明日海さん。
今まで毎日、エドガーを演じることで、エドガーに寄り添っていたんですね。
「もしかしたら、どこかでエドガーに出会う事があるかもしれません」
とも仰ってました。
「その時は……どうぞよろしくお伝え下さい」
ここで、どっと笑いが起こりました。
明日海さんから、エドガーへの伝言。
シンプルだけど優しい言葉を、笑顔で聞きながら、私はちょっこり泣きそうになりました。
原作では、最も現代に近い時代のエピソード『エディス』で、エドガーはアランを喪います。
ポーツネル男爵夫妻やメリーベルを喪った時は、孤独と喪失を分かち合えるアランがいました。
アランをいざない、連れて行くことで、喪失の痛みを共有し、孤独を癒しあえた。
そのアランも、もういません。
『エディス』のラストで、エドガーは一人で草原に横たわり、目を瞑ります。
己に内在する、孤独の深淵に身を沈めていくエドガー。
明日海さんはエドガーを演じることで、ひととき隣に横たわっていたのでしょう。
目覚めの時が来て、明日海りおに戻っていく時、エドガーを独り置いていくには忍びなかった。
その痛切な胸の痛みが響いてくるようでした。
「明日からは(東京宝塚劇場へ来ても、ポーの一族を)上演していませんが……」
ここで、んん~~と言葉に詰まると、
「…皆さんが何とかして下さい」
おいおーーーい!
まさかの観客へ丸投げ!
……という苦肉の策…?
これもまた、明日海さんのジレンマが見え隠れするご挨拶でした。
エドガーへ差し伸べる手を持たなくなる、そんな己を歯がゆく思っているのかな…と。
大丈夫です、明日海さん。
明日海さんはもう、エドガーの分身ですから。
エナジーを混ぜ合わせた仲なのですよ。
……とはいえ、ご安心下さい。
ちゃんと寿命は尽きるはずなので。
明日海さん、実年齢より見た目年齢がかなりお若いので、もともとバンバネラの血が少し混ざってたのでは?
(……おっと、すみれコード)
カーテンコールは何度あったかな?
最初のご挨拶に次いで、再び幕が上がった時、明日海さんはじめ、花組子達がずらり揃い踏み。
必ず何らかのプラスアルファのコメントを入れる明日海さんには珍しく、言葉に詰まり、
「本日は本当にありがとうございました」で締め。
次に幕が上がると、退団者3名と明日海さんが舞台上に。
「では、一人ずつ一言いただきましょう。 学年が下の子から」
矢吹世奈、紗愛せいら、菜那くらら、飛鳥裕がコメント。
ここでも、飛鳥さんは
「頼まれてもいないのに、花組さんへお邪魔してしまって…なのに、こんなに温かい拍手を頂けて…花組ファンの皆様、ありがとうございます」
というような事を仰って。
飛鳥さんへの客席からの拍手は、どの退団者よりも大きく湧きました。
そして明日海さんもまた、潤んだ瞳を瞠りながら、大きな拍手を送っていました。
いつもなら、一人一人へコメントを寄せたり、何かしらイジったりする明日海さんですが、感極まった様子で、
「みなさーーん!」
…と、袖にはけていた組子たちを招集。
あんなに大きな声で、組子を呼び寄せたのは初めてではないかしら?
さらに次の幕が上がった時は、舞台に明日海さんが一人立っていました。
この時ですね、「明日から、(東京宝塚劇場へ)来ても、(ポーの一族は)やっていませんが……皆さんが何とかして下さい」と言ったのは。
感無量で、想いが大きすぎて、言葉と上手く重ならないのでしょう。
「みなしゃあぁぁ……ん」
…と、この時はちょっと掠れた小さめの声で組子たちを呼ぶ、いつもの明日海スタイルでした。
劇場は総立ち状態でしたが、花組ポーズはしないまま、幕が下りました。
終演アナウンスも鳴りましたが、客席からはアンコールの拍手が鳴り止まず。
そこで、幕前にカニさん歩きの大羽根背負ったトップスター登場と相成りました。
感想その1でも書きましたように、「THE 花組!」を押し出すより、「ポーの一族ファミリー」であろうとして、花組ポーズを封印したのかな…と私は推測しました。
Merciさんが「今回の公演は、外部からの注目度も高く、内輪受けの要素を敢えて外したのでは?」とブログで推察されていて、なるほど…と。
そうですね、そういう配慮も想定できますね。
何にせよ、広い視野で考えられた結果なんだろうな…と、改めて敬服しています。
今も思い出すのですが、明日海りお体制の大劇場公演2作目・2015年『カリスタの海に抱かれて/宝塚幻想曲』阪急交通社貸切公演での事。
司会が段取りを間違えた事がありました。
その折、明日海さんはとっさに、
「すみません、うっかり言い忘れた事がありました。よろしいでしょうか?」
…と己のミスにして、正確な段取りに戻されたんです。
スポンサーである阪急交通社さんへの手前、どうしても流す事ができない段取りでした。
誰のことも責めず、恥をかかせず、事を納めた明日海さん。
この機転と思いやりを目にして、私は己を恥じました。
正誤にこだわり、己の正義を押し付けがちな己。
人の気持ちより、己のつまらない体面を気にしてばかりで…。
これは一例ですが、明日海りおという人を知れば知るほど…といっても、外から見える範囲に過ぎませんが……尊敬すべき方だと思っています。
今回、『明日海りおの千秋楽の挨拶』としては珍しく、言葉少なだった印象を受けました。
それだけ、感無量だったのだろうと……そんな風に感じました。
私達の想像をはるかに超えた、想いを受けとめ、期待や責任を背負い、千秋楽を迎えた明日海さん。
花組の皆さま、関わられたスタッフの皆さま、本当にお疲れ様でございました。
そして、明日海さん。
『奇跡を呼ぶ男役』を体現した2ヶ月と25日……言葉になりません。
明日海さんと出会えて良かった。
そう思っている人はたくさんいる事でしょう。
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