Quantcast
Channel: シエスタの庭
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2993

『ハンナのお花屋さん』に潜む人魚姫たち

$
0
0

花組『ハンナのお花屋さん』には、様々なキイワードが登場します。
その一つが『人魚姫』
デンマークの児童文学作家・アンデルセンが創作した物語。

作中、ミア(仙名彩世)が使うハンドルネームが『リトルマーメイド』

それに対して、クリス(明日海りお)は『アンデルセン』と名乗ります。

アンデルセンの名前は、ハンス・クリスチャン。
おぉ、クリス?!

アンデルセンは生涯、失恋を繰り返していたそう。
失恋の原因は「容姿が醜かったから」説がメジャー。

明日海クリスはイケメンですが、フラレ続きだったんですよね。

失恋の原因は「同性愛者だったから」と唱える向きもあります。
同性愛者説は、マイナーな仮説ですが。

同性愛は宗教的禁忌も絡み、ハードルは高かった事でしょう。
好きとさえ口に出来なかったかもしれません。
まさしく人魚姫。

人魚姫のモデルは、アンデルセン自身とも言われていますね。


ミア以外にも、『ハンナのお花屋さん』には人魚姫キャラが潜んでいます。

その一人が、アナベル(音くり寿)
紫陽花の一種・アナベル。
紫陽花の花言葉は「移り気」なのに、アナベルは「一途な愛」なんですね。

クリスに仄かな憧れを抱いている事を、そこかしこで匂わせるアナベル。

クリスが英国を離れ、デンマークで新規事業を始めると知り、張り切る店員たち。

その中で一人、複雑そうなアナベル。
クリスがいなくなる花屋で、自分はやっていけるのか。
自信を持てないでいるアナベル。

怪我でバレエの道を諦めたアナベルは、花屋で楽しそうに働くクリスを見かけ、フローリストの道へ踏み出しました。

アナベルにとって、クリスの存在は恋愛対象に留まらないのでしょう。

暗闇で見つけた光が、クリスだったんですね。

ストレートに態度や言葉に出しこそしませんが、クリスへの一途な気持ちはミア以上かもしれないアナベル。

クリスに、紫陽花のアナベルを手渡した事が、精一杯の告白でした。

気づいてやれよ、クリス〜〜〜(もらい泣き)


そして、アベル(芹香斗亜)も人魚姫キャラといえましょう。

ヨハンソン家の実子ではないアベル。
子どもになかなか恵まれなかった両親が、救貧院から引き取った養子でした。

弟・エーリクは、アベルか13歳の時に生まれた、両親の実子。

アベルは生まれつき気品があり、ヨハンソン家の嫡子だと、誰もが疑わなかったアベル。

裏返せば、ヨハンソン家の誰もが、秘密を漏らさなかったという事でしょう。

アベルもまた、ヨハンソン家の人間であろうとし、育ててくれた両親に報いようと必死でした。

最愛の妻子(ハンナとクリス)にも終生 告げなかったアベル。
秘密を守り続けた両親を尊重し、その姿勢を踏襲したのではないか、と。

両親に深く感謝するアベルは、己の人生より、「育ててくれた恩に報いること」を重視。

彼が実子なら、育ててもらった事に、それほどまでに感謝したか、わかりませんね。

遠慮なく、自分のために…Selfishに生きられたかもしれない。

言葉を発せない…というより、言葉を呑み込んだ人魚姫が、アベルなのでしょう。


そして、クリス。
クリスもまた、人魚姫と言えましょうか。

父・アベルへのわだかまりを抱えてきた、孤独な魂。

アベルが呑み込んだ言葉が、息子のクリスに影を落としてしまったんですね。

『己の心の声に耳を傾けて』

無理しない。
我慢しない。
意地を張らない。

『苦しくなったら、森に行きましょう』とハンナはいざないます。

フィトンチッドが満ち溢れる森で、心がフラットに、ニュートラルに還っていく。

素直に。
我がままに。
あるがままに。

『人魚姫』が発表されて 280年の時を経た今、人魚姫たちが救われる物語が生まれたんですね。


にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2993

Trending Articles