9月30日(土)星組『ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA』を観てきました。
15時 阪急交通社貸切公演。
感想はネタバレを含みますので、まだ知りたくない方は読まれない方が良いかと。
感想はネタバレを含みますので、まだ知りたくない方は読まれない方が良いかと。
お読み下さる場合も、「こういう感じ方、見方もあるのか」と軽く読み流して下さい。
あくまでも、私の個人的な感想に過ぎませんので。
あくまでも、私の個人的な感想に過ぎませんので。
まず、芝居の総評。
『ベルリン、わが愛』は予想より良かったです。
極めて TAKARAZUKAらしい作品。
夢と情熱を抱く主人公がいて。
悪役は、紛れもない悪で。
そこにあるのは、ごくシンプルな単一の視点。
登場人物の誰にも、迷いがない。
観てる側にとって、善悪も、正誤も明らか。
この作品は、反戦・人種差別・イデオロギーなど、重いテーマを含んでいます。
それを深刻に踏み込みすぎず、ロマンスで緩和しつつ、印象に残す。
例えば、悪の象徴として登場する、ナチス・ドイツ。
彼らの軍服やダンスは、見所の一つ。
スタイリッシュでかっこいい。
ナチスの広報大臣・ゲッペルスが SS(ナチス親衛隊)を従えて踊るフォーメーションは大きな見せ場。
芝居の流れの中で描かれる、ナチスの理不尽さ・冷酷さ。
同時に、コスチュームや統率のとれた動きはあくまでもかっこよく。
ヒドイ!
でも、カッコイイ!
そんな風に描いて、物語に破綻がなく、観客にも相応の印象を残すのは、宝塚なればこそ。
ジャズ歌手ジョセフィン・ベイカーを登場させた所に、原田諒先生のコダワリを感じました。
夏樹れい演じるジョセフィンは、ソウルフルな歌声と、独特のビジュアルで強烈な印象を残します。
彼女の登場はごく短いのですが、インパクトは大きく、その後の物語に説得力を与えます。
配役発表を見た時は、「退団公演で、女役を振るなんて…」と思いました。
いまは、夏樹さんにふさわしい役だと感じています。
「褐色の女神」ともてはやされても冷静で、差別に負けない女性黒人歌手。
歌ウマで男役を極めた夏樹さんだからこそ、性別を超えた骨太なエンターティナーを無理なく表現できるのだな、と。
少し余談になりますが、ジョセフィン・ベイカーはレビューの女王として知られ、映画『モン・パリ』にも出演しています。
彼女をフィーチャーしたのは、宝塚レビュー90周年にこと寄せた面もあるのかも…?
さて、本題に戻りましょう。
劇中で、ルイーゼロッテ(有沙瞳)が映画について、こうあってほしいと希望を述べます。
「誰にでも分かりやすく、楽しい話がいい」
これは、娯楽としてのエンターティンメント全般に対する希望かもしれません。
もちろん、様々な作品があっていい。
難解で、複眼的で、重層構造述べる物語があってもいい。
ですが、シンプルで分かりやすいお話もまた、良いものだと改めて感じました。
『ベルリン、わが愛』は、従来のTAKARAZUKA的でありながら、少し違う所もあります。
それは、テオ(紅ゆずる)とジル(綺咲愛里)が出会った瞬間、お互いに一目で恋に落ち……たり、しないこと。
仕事(映画撮影)を通して出会い、少しずつ互いを知り、惹かれあっていく。
時間と言葉を重ね、互いを知りあっていく段階が描かれる事。
これは、ごく日常的でありながら、TAKARAZUKAではめったに見られないんですよね。
大抵は一目惚れだったり、最初から好きだったりで。
徐々に惹かれていく段階が描かれるなんて、珍しいこと。
共に同じ目的・映画製作という仕事を通して、恋が生まれ、育まれる。
なんともナチュラルな展開です。
ただ、TAKARAZUKA は必ずしもリアルである必要はないと思っています。
あり得ないような出会いや一目惚れも、それでOK。
美しい者同士が出会い、惹かれ合う事に理由など要らない。
それもまた、TAKARAZUKAなのですから。
脚本はシンプルで破綻なく、わかりやすく。
演出は、さりげなく凝ってました。
各所で効果的に映像を使うあたり、齋藤吉正先生の外箱演出を思い出したり。
映画製作が骨子のお話らしく、白黒映画フィルム映像の味わいが効いてます。
また、観客席から映画を観ているような演出も、客席の反応で、それがどんな作品か伝わってくる。
そういう所も上手いなと。
大半の星組生が、こちらを向いて階段状の席に座ってるので、各自の表情や反応の違いを楽しめます。
ご贔屓や木になる人がどこに座ってるか、探す楽しみもありますね。
戦前のレトロな雰囲気、ファッション等も素敵です。
希望を忘れない前向きな主人公は、紅さんにピッタリ。
少年時代からの夢を叶えたテオは、紅さん自身の等身大の姿にも感じられます。
紅さんと綺咲さんは、主役カップルらしい美男美女。
『舞台上で、誰よりも華やかで美しい男女2人が惹かれ合う』という宝塚的な不文律が成立しています。
それもまた、実は結構すごい事なんですよね。
個人別で、誉めちぎりたいのが、みっきー(天寿光希)と、ことちゃん(礼真琴)
天寿光希 演じる、ベテラン俳優ヴィクトール・ライマン。
人がたくさんいる中でも、存在感を放ってました。
黙ってても、重みのある渋い男前。
本作で一番の男前だと、私は思いました。
ラストに通じるキーパーソンにもなっています。
そして、礼真琴。
礼真琴については、別枠で語ります。
…ていうか、語らせて下さい。
お芝居の総評は、そんな感じです。
レビュー感想か、礼真琴の感想に続きます。

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