10月に入り、NHK朝ドラが大阪局制作『べっぴんさん』にバトンタッチ。
大阪局制作の朝ドラは時々、宝塚を取り上げてきました。
ヒロインが宝塚を目指した作品としては、紺野美沙子主演『虹を織る』(1980年)
石原さとみ主演『てるてる家族』(2003年)では、ヒロインが宝塚音楽学校に入るも、パン職人の道に変更。
石原さとみの姉役で、現役ジェンヌ紺野まひるが出演しました。
『ぴあの』(1994年)は現役ジェンヌ・純名里沙主演。
『べっぴんさん』と宝塚歌劇団の繋がりは、一見何もありません。
ですが、小林一三翁や阪急グループに広げると、関西ならではの繋がりが見えて来ます。
①阪急が手本にした、ファミリア
ヒロインのモデルは、上質な子ども用品専門店として知られるファミリア創業者の一人・坂野惇子(ばんのあつこ)
ファミリアは、品質の良さと共に、接客が超一流だと評判になり、成長を遂げ、皇室御用達になりました。
阪急百貨店の接客は、ファミリアを手本にしたと言われています。
阪急グループといえば、小林一三翁ですよね。
②宝塚音楽学校のモデル・甲南高等女学校
宝塚音楽学校の設立にあたり、小林一三翁は幾つかの学校を参考にしたそうです。
その大きな柱は、東京の芸術専門学校(おそらく今の東京藝大)と、京阪神の高等女学校。
当時、「歌舞音曲は芸者のする事」とみなされ、宝塚歌劇団は人集めに苦労しました。
そこで、従来のイメージを払拭すべく、専門性の高さと名門お嬢様学校の色合いを含んだ養成学校を設立。
それが、宝塚音楽学校。
そのモデル校の一つが、甲南高等女学校(現・甲南女子)といわれています。
同校の理念「清く、正しく、優しく、強く」に触発され、
宝塚の理念「清く、正しく、美しく、朗らかに」が生まれたのではないか…と言われています。
(この項は、大阪大学で宝塚歌劇の研究をされてる方からお聞きしました)
坂野惇子さんは、甲南高等女学校の卒業生。
ドラマでは、女学校時代は短期間しか描かれません。
学校の様子は少ししか登場しませんが、宝塚のモデル校と思うと、もっと映してほしいなと。
坂野さんは戦後、高等女学校時代の友人と協力し、ファミリアを起業しました。
そう、超一流と評判になった接客とは、坂野さん達のそれだったんですね。
坂野さん達と、タカラジェンヌに共通する、思慮深く上品な対応。
それぞれの学び舎で培ったとして…その根が繋がっているのかも?…と思うと、感慨深いですね。
そういえば、同校は阪急沿線にあります。
研究者によると、小林一三さんの縁者が在学した可能性もあるかもしれないとの事でした。
少なくとも、評判は聞き知っておられたでしょうね。
歴史ある高等女学校は、キリスト教や仏教など、何らかの宗教団体が母体になる事が多いかと思います。
そんな中で珍しく、甲南高女は無宗教である事も、モデル校として打ってつけだったのかもしれません。(これは私の推測ですが)
宝塚音楽学校は、広く門戸を開き、生徒を集める事を目指して発足しました。
何であれ、限定要素は少ない方が望ましかっただろう、と推察します。
③共通する象徴・すみれとクローバー
朝ドラヒロインの名前は、すみれ。
宝塚を象徴する花・すみれを連想する…のは、宝塚ファンだけですか?
四つ葉のクローバーも、物語を通して、重要なモチーフ。
母子で四つ葉のクローバーを探す姿。
そんな中、倒れる母。
病室の母へ四つ葉のクローバーを渡すと、それぞれの葉が示す意味を話してくれます。
勇気、信頼、友情…といった風に。
女学生に成長したすみれが、学友にハンカチを渡します。
そこには、すみれが刺繍した四つ葉のクローバーが。
甲南高等女学校の校章にも、クローバーがあしらわれています。
こちらは三つ葉ですが。
なお、四つ葉のクローバーをフランス語で表現したら、「キャトル・レーヴ」だと思うんですよね。
私自身は、朝ドラを観ると北翔さんを思い出します。
歌劇で、朝ドラを毎日観てると仰ってたので。
NHK大阪局の制作は、宝塚を絡める事が結構あります。
そういう視点で見ても、なかなか興味深いのでした。
余談ですが、かつての甲南高等女学校、現在の甲南女子大学には「宝塚歌劇」の講座があります。
(一般教養、通年)
講師は宝塚評論の第一人者・薮下哲司先生。
宝塚歌劇の誕生から現在まで、小林一三翁の生涯、宝塚歌劇と絡めて多様な分野との関わりなど、たいへん興味深い講座のようです。
宝塚百周年の時、市民講座として広く特別開講されました。(4回コース)
同校出身や、神戸出身の卒業生ジェンヌがゲスト出演したり、DVDあるいは生歌も聴けたり…と、豪華な催しでした。
市民講座なんだけどね。
しかも、無料……太っ腹です、甲南女子様。
臨時追加講義もありました。
臨時講義では、宝塚とシェイクスピア作品の関わりがテーマ。
いろいろお話し下さった、最後の最後に。
明日海りお演じるロミオを絶賛して下さいました。
少年特有の初々しさを最も鮮やかに表現していたのは、明日海りおだと。
薮下先生、ありがとうございます…!
豪華ゲストや映像に気を取られがちでしたが、薮下先生はじめ、研究者のお話がとても興味深く、記憶に残っています。
創立当初にモデルになった学校が、今の宝塚を学ぶ。
興味深い繋がりです。
なお、甲南女子学園(中高)出身の現役タカラジェンヌには、久城あす(雪組94期)、紅咲梨乃(星組102期)がいます。
他にも、いらっしゃるかな?
見落としてたら、ごめんなさい。
現役生ではありませんが、あす君のお姉様(藤咲えり)も同校卒業生。
新公やバウ公演で、ヒロインを務めた藤咲さん。
宙組『仮面のロマネスク』では、トゥールベル夫人を演じました。
藤咲さんは現在、大手の音楽教室で歌唱指導をされています。
あす君と同じく、歌が得意な藤咲さんから指導を受けられるなんて、贅沢ですね。
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