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花組全ツ感想❶『激情/GRAND MIRAGE!』初日観劇 in 大阪梅芸

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2023年11月17日(金)花組全国ツアーが始まりました。

 

演目は『激情-ホセとカルメン-』と『GRAND MIRAGE!』

 

主演は永久輝せあ(97期・研13)

ヒロインは星空美咲(105期・研5)

二番手役は凪七瑠海(89期・研21/専科)

 

 

激情-ホセとカルメン-

 

初演は1999年、宙組。

姿月あさと&花總まり

 

再演は2010年、星組。

柚希礼音&夢咲ねね

 

3度目の上演は2016年、月組。

珠城りょう&愛希れいか

 

再演の星組と月組は、トップ就任前。

その直後、トップコンビに就任しました。

 

4回目の上演・2023年花組は、永久輝せあ&星空美咲

現トップコンビ(柚香光&星風まどか)は退団発表済。

 

全国ツアー主演は、次期トップ就任に王手をかけたようなもの。

ひとこちゃん(永久輝)おめでとうございます。

 

とはいえ、相手役も込みで、公式発表まで油断は禁物ですね。

(油断禁物は、私自身に)

 

『激情』はカルメンで成否が分かれる作品と言われます。

本作はどうかと言えば……

 

 

純粋なホセ、自由なカルメン

 

永久輝せあ演じるドン・ホセ。

真面目で純粋な、エリート肌の青年の風情。

故郷でトラブルを起こし、軍隊に入った経緯があります。

 

捕縛したカルメンを逃してやったホセ。

代わりに、己が営倉入りとなります。

 

カルメンが脱獄の手引きを申し入れるも、頑として断るホセ。

己の意思を通す、毅然とした姿にカルメンは惚れ込む。

 

果たしてカルメンは、ホセが初めて出会ったタイプの女性。

自由奔放で、誰にも何にも縛られず、本能のまま生きる。

 

営倉から釈放され、その足でカルメンに会いに行くホセ。

カルメンは大喜びでホセの胸へ飛び込み、甘い時間を過ごします。

 

規則を理由に、門限までに軍隊へ戻るとろうとするホセ。

それを強引に引き留めるカルメン。

押し負けて、カルメンと過ごす事を選ぶホセ。

 

カルメンは一貫して「己の心が望むこと」を選択します。

 

ホセは「今まで見た事がないタイプ」のカルメンと出会い、夢中に。

「新鮮み」というインパクト。

 

その後も、思い通りにならないカルメンに振り回されます。

カルメンを手に入れたいのに、手に入らない。

課金(殺人、除隊など)を繰り返し、膨らむサンクコスト。

 

投資した費用(労力、時間、資金など)を回収せぬまま、撤退はできない。

そんな打算も働いたことでしょう。

 

ホセ自身も無自覚なずるさを、直観的に気づいたカルメン。

 

「自分の意思を貫いたホセは輝いてた」

「己は誰にも縛られない」

「己がしたくない事を強要されるのは嫌」

 

規則や誘惑に左右され、結果的に己の意思決定を、他人に委ねてしまったホセ。

 

やってる事は滅茶苦茶ですが、常に自分軸を貫くカルメン。

 

ホセとカルメンの対照的な人物像が浮き彫りになった『激情』でした。

 

永久輝せあ、星空美咲。

どちらも、ホセやカルメンとは異なる個性の持ち主です。

そのままでスッとハマるとは思えないキャスティング。

 

幕が上がってみれば、ホセとカルメンの心情や個性が否応なしに伝わる、伝わる。

 

常に迷いと苦悩がせめぎ合う、永久輝ホセ。

本人はMAX真剣ですが、軸のズレに無自覚。

 

本質的なことに気づきながら、それを表現する幅が狭いカルメン。

彼女は「自由に生きる」事を「好き勝手」と混同している向きがあります。

 

ホセが知的な視点から、カルメンに提案する余裕があれば。

今度は、カルメンがホセに新鮮な魅力を感じ、追いかけて来たかもしれません。

 

…と、問題点の考察まで導いてくれる、永久輝ホセと星空カルメン。

 

永久輝さんも、星空さんも、元の持ち味から想像できないほど、ホセとカルメンがハマっていました。

 

巧く演じるというより、体現している感じ。

 

そして、考えさせられる…というか、哲学の香りが漂う作品でした。

 

情熱的な恋物語でありながら、人の生き方を問う、余韻が残る舞台でした。

 

 

★舞台セット

 

シンプルなセットを有効利用。

 

ホセが投獄される営倉は、テープが不規則に斜めに張り巡らされて表現。

警察が張る立入禁止テープみたいな印象。

 

縦格子を用いたセットは、見えるけれど距離感を持たせています。

内と外、現実と幻想、彼岸と此岸など、様々な次元の差も表現。

 

人が持つ共通認識を利用し、シンプルな形態だからこそ浮かびやすいイメージ効果を活用。

 

どんなものもシンプルだからこそ、センスが問われます。

自然と場に溶け込み、視覚効果やイメージを生かした発想に拍手。

 

突貫で仕上げてはバラす全国ツアー用としても、よく考えられたセットかと。

舞台装置担当は、國包洋子先生です。

 

 

★永久輝せあ(97期・研13)

 

ドン・ホセ

衛兵の伍長。

婚約者がいながら、カルメンに惹かれる

 

美しく、気品漂う永久輝さん。

苦悩する表情が、色香を増します。

 

少年のような純粋さ、幼さが垣間見えるホセ。

そして年齢に関係なく、愚かで不器用な「どうしようもなさ」も。

 

愚かだけど、憎めない。

弱さに共感出来るホセでした。

 

永久輝さんの演技は繊細で、ホセの痛みが伝わってきます。

ですが、泥臭い男を演じても、重すぎないと申しますか。

永久輝さんから放たれる美による中和効果でしょうか。

 

苦しい気持ちは共感できるのに、同時にうっとり。

むしろ、苦悩する姿がたまらない。

闇落ちが似合う…!

 

下士官(伍長)ですが、将校(少尉以上)が似合う風情。

軍服も似合います、ほんま。

 

星空美咲との並びは、美と知の融合。

方向性や空気感が合っているように感じました。

 

 

★星空美咲(105期・研5)

 

カルメン

自由奔放なロマ(ジプシー)の踊り子

 

舞台奥を喋りながら歩く女子。

そのダラッとしたシルエット、歩き方から、柄の悪さがプンプン匂う。

さらに響き渡る、低く荒っぽい第一声に「誰?!」

 

ホセはカルメンを「こんな女は初めて」と驚いてましたが。

わたしも星空美咲のこんな声、初めて聴きました。

おとみちゃん(鴛鴦歌合戦)との落差が凄すぎる。

 

話し方はもちろん、仕草や動き方など、粗雑ながら艶っぽい。

永久輝ホセを自ら組み敷き、馬乗りになる星空カルメン。

ホセが攻めに転じると、無邪気な笑顔で迎え入れる。

 

己の欲望に忠実なカルメンは、他者を平気で振り回す。

近視眼的で刹那的な姿は、身勝手に見えます。

一般的に、共感されづらい人物像かと思います。

 

星空カルメンは「自分軸」が芯にある。

己がどういう人間か、わかっている。

たとえ小舟であっても、己の舵は己で取る。

その気概が、自由奔放と身勝手の境界を分けているのかな、と。

 

台詞・歌唱とも、発声が激変。

役に合わせた声を創り上げています。

いつもの可愛らしい声を知る方はぜひ聴き比べてみて下さい。

 

「自分軸をもつ女性像」は、演出家・謝珠栄氏の狙いでもあるでしょう。

演出家の意図を汲み取り、体現できる点も、星空のポテンシャルの高さを感じます。

 

野性と情熱を帯びた、誇り高い星空カルメン。

説得力と魅力を備えた、令和のカルメン爆誕です。


 

 

パレード

 

咲乃深音(101期・研9)エトワール

帆純まひろ(99期・研11)

一之瀬航季(100期・研10)

綺城ひか理(97期・研13)

凪七瑠海(専科89期・研21)小羽根

星空美咲(105期・研5)小羽根

永久輝せあ(97期・研13)大羽根

 

羽根は中央が白で、端がピンク。

おとみちゃんの日傘みたいな柄(鴛鴦歌合戦より)

 

大羽根を背負った永久輝さん、階段上に立ってお辞儀。

マイクに入らない小さな声で「ありがとうございました」

一瞬、泣きそうになっていました。

感慨深かったんでしょうね…。

 

 

★ご当地出身者紹介

 

美風舞良組長が「広く関西出身者を紹介します」と。

 

大阪府堺市出身の花海凛(108期・研2)に始まり、延々と続く紹介。

大阪、兵庫、滋賀…中でも、兵庫県出身率高し。

近年は首都圏出身者が多いのですが、久々に関西勢の勢いを実感。

 

トップバッターの花海さんは全国ツアーの最下級生。

階段上、一番下手にスタンバイ。

名前を呼ばれると同時に「はい!」と手を真っ直ぐ上げました。

花海さん、声と身体のキレがめちゃくちゃ良い。

 

視界を遮ってはならぬ、と反応した星空美咲がしゃがみ。

永久輝せあもしゃがみ。

凪七瑠海も連動。

 

誰かが呼ばれるたび、その立ち位置に応じて動き出す、羽根を背負った三人組。

この動きが可愛くて。

 

気づけば、美咲ちゃんはどんどん下手端へいっちゃうし。

永久輝さんは左右を見回し、次が誰か予測する勢い。

凪七さんは、永久輝さんに合わせて移動。

 

ほかの組子たちも、潮が引くように身を引く。

モーセが海を渡るよう。

絶景かな、絶景かな(←それは月組『万華鏡百景色』)

 

締めは大阪府摂津市出身・美風舞良さんでした。

 

美風さんは、副組長に就任した紫門ゆりや(91期・研19)も紹介。

紫門さんは愛知県の会場で、地元出身として紹介される事でしょう。

 

 

★主演あいさつ

 

印象的なことをニュアンスだけご紹介。

順番は入れ替わってるかも、ごめんなさい。

 

永久輝「30分、開演が遅れたにも関わらず、こうしてお集まりいただき、ありがとうございます」

 

会場を見回し、申し訳なさそうに。

 

永久輝「大好きな大阪から全国9ヶ所へ出発します」

 

大阪が好き?

嘘でもうれしいわ♡

 

永久輝「私が憧れた宝塚を、肌身で感じられる幸せなレビュー」

 

私が憧れた宝塚…で感極まって涙声に。

 

永久輝「その美しさ、温かさ、愛の深さを感じて頂きたい」

 

岡田敬二先生の『GRAND MIRAGE!』

岡田レビュー、私も大好きです♡

 

永久輝「先生方のご指導の元、お稽古した成果を早く皆様にお見せしたくて」

 

永久輝「その一心で、今日まで過ごして参りました」

 

永久輝「お客様お一人お一人の心に、届いていますように」

 

永久輝さん、何度かグッと来て、瞳を潤ませていました。

 

その挨拶の間、ずっと永久輝さんを見つめていた美咲ちゃん。

基本的に微笑んでいましたが、永久輝さんと同じタイミングでウルッと来てました。

 

2回目のカテコだったかな?

凪七さんについてお話したのは。

 

永久輝「専科から凪七瑠海さんにお力添えを頂いてます」

 

永久輝「かちゃさんの大きなお心に包み込まれ、大きな背中を追いかけて…」

 

永久輝「…追いかけるだけじゃなくて、並んで!」

 

舞台を創り上げていきたい、と。

凪七さんを真っ直ぐな瞳でみつめて伝えていました。

 

カテコは4回。

3回目からスタンディング・オベーション。

 

永久輝「私は全国ツアーに毎回参加してるんですが、羨ましくて」

 

永久輝「紹介してもらえないんですよね、東京出身だから」

 

永久輝「今回はどこかで紹介してほしいな~♡」

 

美風組長へ向かってアピール。

美風さん、指でOKマーク。

永久輝さん、うれしそう。

 

神奈川公演で「関東出身者」括りで紹介するんですね。

今回の大阪、その前哨戦ですね?

 

4回目の幕が上がり、

 

永久輝「ほんまにおおきに~!」

 

永久輝「月曜までのあと3日間、大阪で公演します」

 

朝から雨が降ったり止んだりでしたが、お天気の話は出ず。

花組的に新鮮でした。

 

お気をつけて行ってらっしゃい。

早く帰って来てね~!

 

 

▽ 健康第一!

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