NHK教育『SWITCHインタビュー達人たち』を視聴しました。
以下、文中の科白はニュアンスや、文脈を意訳した書換を含みます事をご了承下さい。
対談相手は、バレエダンサー上野水香さん。
上野水香さんが、柚希礼音さんを指名したんですね。
バレエダンサーを志しておられた柚希礼音さんにとって、同世代でコンクール上位入賞常連だった上野さんは有名人。
指名されて、お母様共々驚かれたとか。
「私の事を知って下さってる事に驚いた」
と謙虚なちえさん。
柚希さん男役時代の映像も出てきました。
しかも、キスシーン比率高し。
さらに、お稽古場風景がふんだんに。
お稽古場って、関係者しか入れないフィールド。
貴重ですよね……大好き、お稽古場風景。
宝塚観劇時の幕間はいつも観てます、お稽古場風景が映るモニター。
舞台映像も貴重な公演をさりげなく流したよ、NHKさん。
2013年ベルばら公演の特別出演バージョン。
柚希アンドレと凰稀オスカル。
この映像を出してくるって…NHKの編集センスに拍手。
かつて星組で二番手として柚希さんを支えた凰稀かなめさんを、こんな形で出してくれるなんて……心憎い…!
ちえさんは男役から女性に戻る際、いろいろ戸惑われたそうです。
でも、番組に出てるちえさんは、すごくナチュラルで。
男役を降りた素顔のちえさんは、あるがままで素敵でした。
かっこいい男役でも、かっこいい女性でもなくて。
かっこいい柚希礼音。
柚希ファンでなくとも、一時間釘づけになりました。
そういえば、画面左上に肩書と名前が出てまして。
水香さんは「バレエダンサー」
柚希さんは「俳優」でした。
女優ではなく、俳優。
ちょっとした事かもしれません。
でも、この表記は……グッジョブ、NHK。
受信料を気持ちよく払える気がしました。
口座引落だけどね。
有無を言わさず引き落とされてるけどね。
柚希さんは宝塚に関するお話が多くて。
本当に宝塚を愛してらしたんだな…と伝わってきました。
舞台に立つことはもちろん、「宝塚」というシステムや社会を。
宝塚で継承していってほしいものは「上下関係」とエッセイでも書かれていた柚希さん。
厳しい上下関係やしつけ、それらの指導が大きな愛に裏打ちされていると仰ってました。
「宝塚に入った時は上下関係がすごくて驚いて」
「人生で、こんなに怒られた事がないくらい怒られ…怒って頂いた」
怒って頂いた、と咄嗟に言い直す柚希さん。
上級生や先達への感謝と尊敬が込もっていました。
「宝塚が100年続いたのは、礼儀作法と上下関係がしっかりしてるから」
「ひと学年でも上の人を立て、意見をしっかり聞く。それが気持ち良い空気感をつくっている」
「舞台上は自分の表現を思い切ってしていいけど、その奥にきちんとしたものがある」
また、厳しさは愛と関心のあらわれだと柚希さん。
「人に関心がちゃんとある事が素晴らしい」
「みんなで良くなろうとする。誰も見捨てない」
「すっごく厳しいけど、逆に一番あったかい」
逆に、愛の対極にあるものは「無関心」と「放置」だと指摘する礼音さん。
「外の皆さん、社会の話を聞いてると、上の人が若い子に気を遣って注意できないと」
「厳しい事を言わなくて済むなら、その方が楽。 嫌な人って思われずに済むし」
「(言うべき事を)言う事こそが愛情」
…など、宝塚の精神、ひいては柚希礼音スピリッツを、柔らかな言葉で伝える柚希さん。
内容はシャキッとしつつ、口調はゆったり、はんなり。
「歌って踊るなんてすごい。バレエで踊りきった後は話ができないのに…」と上野水香さん。
踊り切って、歌い継ぐハードさに「心が折れそうになる」と柚希さん。
「心の問題?」と驚く水香さん。
礼音さん曰く、黒燕尾群舞のあと、トップだけが残り、少し歌ってデュエダンに移る時、心が折れるかどうかの瀬戸際なのだそう。
ショーひとつやるだけで、ものすごい有酸素運動量なのだとか。
「乗り切るために何かしてるのか?」との質問に「10時間くらい寝る」と柚希さん。
「トップ時代は10時間くらい寝ないと回復しない」
「すっごい寝た次の日は出てくるパワーが違う」
「あれを味わってしまったら、6時間睡眠ではやりたいのになんかパワーが出て来なくなって…」
「しっかり寝て、溢れ出るエネルギーを使わねば」
出ずっぱりのトップスターは、気力体力勝負。
柚希さんほどタフに見える方でも、激しく消耗してらしたんですね。
「舞台上の存在感の大きさは大事。柚希さんはカリスマですよね」と上野さん。
「カリスマと言って頂いても信じられなかった、現役時代も」と振り返る柚希さん。
「頑張った時は何も出なかった事が、リラックスして、本当の自分の心の奥の奥をちゃんと使っている時ほど、良いと言って頂けた」
無の境地…でしょうか。
集中し、研ぎ澄まされると同時に、己が開放され、全てと繋がる感覚。
ブレイカーが落ち、スイッチOFFであるが故に、全開ONで繋がる状態。
無の境地に到達できるほど集中できるなんて、よほど(舞台が)お好きなのか。
あるいは命懸けなのか。
その両方なのか。
「一回一回を、これが最初で最後だと思って演る」
一期一会の精神ですね。
確かに生きる事そのものが、一瞬一瞬の積み重ね、二度とやり直しのきかない本番。
今、この時を大切にしたい。
それは観客や共演者やスタッフ…同じ時間と空間を共有するカンパニー…への愛ですね。
上野水香さんは東京バレエ団のプリンシパル。
多くの外部公演にも、主役として招聘され、客演。
頂点を極め、トップに君臨しつづけています。
その座をいずれ譲り渡し、次の段階を見据えるにあたり、柚希さんから話を聞きたかったよう。
お話を伺ってると、基本は以前も今も変わらない感じの柚希さん。
でも、観客やスタッフら「みんなを引っ張って行こう」という気持ちを手放したそうです。
まずは自分が心から楽しみ、作詞も本当の気持ちから生まれた言葉を…と思った礼音さん。
そうしたら、(迷いがあって)浮き足立った状態が、落ち着いて来られたとの事。
組子はじめ、多くの人を牽引して来られた柚希さん。
TOP of TOP として劇団そのものへの責任を背負って来られた柚希さん。
それらの責任から解放された事で、舞台や取り巻く人々(観客、スタッフ、共演者など)との距離感が変化したのかもしれませんね。
柚希さんが背負って来られたもの…その重圧と孤独を想像し、胸が熱くなりました。
お疲れ様でございました、ちえさん。
宝塚の舞台を通して「綺麗な夢の世界のリアル」を追求して来られた柚希さん。
これからも、柚希礼音オリジナルの夢を見せて下さる事でしょう。
おっとりゆったりした話し口調の中に、毅然とした決意や、舞台人としての背骨の確かさを感じた一時間でした。
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『SWITCHインタビュー達人たち』柚希礼音×上野水香
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