2020年の宝塚歌劇の観劇感想の総括です。
今年は、ほぼハズレなしで、どれも満足度が高め安定でした。
…ゆえに、順位をつけるのは困難だと感じました。
でも、そんな結論、読んでて楽しくないよね。
そこで、自分なりに基準を設けてみました。
そもそも、私個人の感想だっちゅーの。(←死語)
1)ぜひもう一度、観たい!
2)今後に繋げてほしいスピリッツを感じる
3)単純に好きやねん♡
この3点を重視しました。
それでも難しかったのですが。
芝居 13本
ショー 9本(うち、ミューサロ&DS 各1本)
文化祭 1本(これはランキング対象外)
◆ 芝居
1)雪組 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』
2)花組 『マスカレード・ホテル』
3)星組 『眩耀の谷』
4)月組 『赤と黒』
5)月組 『出島小宇宙戦争』
6)花組 『はいからさんが通る』
7)雪組 『炎のボレロ』
8)宙組 『FLYING SAPA』
9)宙組 『壮麗帝』
10)月組 『ピガール狂騒曲』
11)宙組 『アナスタシア』
12)星組 『エル・アルコン-鷹-』
13)専科+星組 『シラノ・ド・ベルジュラック』
◆ ショー
1)花組 『DANCE OLYMPIA』
2)星組 『Ray-星の光線-』…大劇場version
3)星組 『Ray-星の光線-』…梅芸version
4)雪組 『NOW ZOOM ME!!』
5)雪組 『Music Revolution!-New Spirit-』
6)専科+雪組 『PASSION D'AMOUR』
7)雪組 『La Voile』真彩希帆ミュージックサロン
8)雪組 『Sho-W』彩凪翔ディナーショー
9)月組 『Welcme to TAKARAZUKA-雪と月と花と-』
おお、宙組は大劇場ベースだと、ショーがなかったんですね。
東京宝塚劇場では『エル・ハポン』と併演の『アウアヴィーテ』がありましたが。
すみません、私は大劇場ベースでカウントしているもので。
この中から、お芝居5本、ショー5本を各々選択。
3本にしようと思ったら、迷い過ぎて、決まらなくて。(オイ)
さらに全部の中から、「これが私の2020年ベスト」1本を選びたいと思います。
(すみません、自己満足につきあって頂いて…)
◆ 芝居の部
5位 宙組 『FLYING SAPA』
演出・脚本…上田久美子
主演…真風涼帆(92期・研15)、星風まどか(100期・研7)
上田久美子先生の意欲作。
これは外せません。
宝塚歌劇は『型』、『枠』、『らしさ』を大切にしてきました。
そんな宝塚の風雲児であると同時に、一番人気の演出家であり、脚本家。
「上田久美子先生と一緒に仕事をしてみたい」と願っている生徒さんも多いはず。
その証左が、トップスター(娘役を含む)の退団作品が上田久美子先生に集中していること。
2015年に大劇場デビューしたばかりですが、
2016年 花組 『金色の砂漠』(花乃まりあ)
2017年 宙組 『神々の土地』(朝夏まなと)
2021年 雪組 『fff-歓喜に歌え!-』(望海風斗、真彩希帆)
2021年 月組 『桜嵐記』(珠城りょう、美園さくら)
『FLYING SAPA』はある意味、宝塚らしからぬ作品でしたが、同時にツボも押さえていました。
真風涼帆、芹香斗亜ら、男役陣が非常にかっこよかったです。
これ、大事。
宝塚では、めっちゃ大事。
娘役(星風まどか、夢白あや他)はチャレンジする役を用意。
飛躍と成長を感じました。
上田久美子先生は、常に「社会の常識」に疑問を持ち、「当たり前」を疑ってこられたようにお見受けします。
「かくあるべし」という風潮に流されず、その裏を見透かそうと目を凝らしていらっしゃる。
そんな反体制派っぽい姿勢をもちながら、誰よりも組織の売上に貢献している、という。
哲学的だけど、机上の空論を並べるだけではない、という。
霞を食べる理想論者ではなく、理想を掲げつつ米代を稼ぐ生活者なんですね。
上田久美子先生は宝塚歌劇団の屋台骨になられることでしょう。
(すでに太い梁の一本でいらっしゃいます)
くーみん先生に憧れて、宝塚の演出家を目指す少年少女も出現するのでは?
4位 宙組 『アナスタシア』
演出・潤色…稲葉太地
主演…真風涼帆(92期・研15)、星風まどか(100期・研7)
実は私、宝塚のショーが大好きなので、一本物は残念な気持ちになるんです。
でも、『アナスタシア』は歌や踊りが多くて、見応え・聴き応えとも、たっぷり。
ソロ歌唱も良かったけれど、コーラスが本当に見事で…!
重層的な、繊細さと厚みが合わさった、上等なミルフィーユのようでした。
映像を効果的に使っていました。
特に一幕ラスト、丘の上からパリが一望できる映像は素晴らしかった。
アナスタシアとディミトリの高揚感が伝わるどころか、こちらまで昂りました。
衣裳やセットも素敵でした。
ロングコートや軍服を着こなす宙組生たち、かっこよかったなぁ…!
海外ミュージカルと宝塚、双方の魅力のマリアージュでした。
3位 月組 『出島小宇宙戦争』
演出・脚本…谷 貴矢
主演…鳳月杏(92期・上演時は研14)
誤解を恐れずにいえば、『出島小宇宙戦争』は少なからずトンチキだと思います。
さらに踏み込んでいうと、駄作寄りだと思います。
でも、好きなんだよね~。
また観たいんだよね~。
谷貴矢先生のオタク気質を感じるサブカル風味、嫌いじゃないんです。
宝塚との親和性はあると思いたい。
そして何より、主演の鳳月杏の力技が素晴らしい。
演者の魅力と実力で、駄作を人気作に変化させる魔法を使いこなせるジェンヌさん。
惚れるしかない…!
ネモ船長…じゃなくて、シーボルト役の風間柚乃(100期・上演時は研6)のナイス・アシストも素晴らしい。
下手したら寒くなりそうなキャラを、めっちゃホットに仕上げ、演じていました。
私はジブリ作品で『ハウルの動く城』が大好きです。
『ハウル』はジブリ作品の中では、駄作寄りだと思います。
でも、大好き。
ときめくから。
『出島小宇宙戦争』は、物語としては穴もありますが、演出家のコダワリと、出演者の魅力で、不思議な熱を帯びた作品と化し、吸い寄せられずにいられませんでした。
いやもう、「なんかわかんないけど、好き♡」を、ここまで分析してみました。
ちなつさんの芳醇な色香に呑まれながらも。
2位 花組 『はいからさんが通る』
演出・脚本…小柳奈穂子
主演…柚香光(95期・研12)、華優希(100期・研7)
柚香光&華優希の新トップコンビの大劇場お披露目公演。
2017年、柚香光の東上公演が初演。
大いに人気を博し、当時のヒロインも華優希であった頃から、異例の再演。
大劇場作品が外箱で再演される事はあっても、その逆はありませんものね。
驚きの判断でしたが、さらにブラッシュアップされて、大劇場へお目見え。
結果、初演を上回る大好評。
何度かの中断を経て、無事に千秋楽を迎えたのは、柚香光がトップ就任から一年近く経って。
波乱万丈の幕開けとなりました。
2020年の新型コロナ禍に直面し、(宝塚では)その煽りを最も受けた作品。
同時に、そんな時流にマッチした「希望をもち、前進する」物語。
『はいからさんが通る』がこのタイミングで上演されたのは、神の采配ではないでしょうか。
どんな苦難にもめげず、目の前の困難にぶつかっていく紅緒さん(花村紅緒)
そんな紅緒さんを、おちょくったり、守ったり、何だかんだで惚れこむ少尉(伊集院忍)
彼らの周囲を取り巻く人々も、一癖二癖あっても、それぞれ一生懸命生きています。
観ていて、漠然とパワーチャージされる作品でした。
また、トップコンビの相性が抜群なんですよ。
特に柚香から華への好き好き光線は、まばゆいばかり。
たとえ仕事であれ、トップコンビが仲良さそうだと、それだけで幸せですね。
(れいちゃんはビジネスではなく、本音ダダ洩れで華ちゃんを好きだと思う)
麗しいビジュアルに加え、相性の良さも眼福なカップルです。
1位 雪組 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』
演出・潤色…小池修一郎
主演…望海風斗(89期・上演時は研17)、真彩希帆(98期・上演時は研8)
私は基本的に、一本物はあまり嬉しくありません。(ショーが好きだから)
ギャング物や禁酒法時代とか、苦手です。
…でも、宝塚の『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』は何度でも観たい。
トップコンビの歌唱力・演技力といった表現力の素晴らしさはもちろん、ですが。
物語の底辺に、良心的な気品が流れていて。
どこか安心して観ていられる、不思議な空気を感じていました。
『ポーの一族』と同じく、小池先生が長い間あたためてきた舞台化構想。
それを実現し得たのは、哀愁と苦悩を滲ませた大人の男を演じられる望海風斗ありきでしょう。
ヌードルスを少年時代から壮年期まで演じ分けた、望海さん。
枯れて、くたびれた味わいまで、かっこよく魅せるとは。
壮年期のヌードルスが最もトキメキました…!
少年期も、ツボといえばツボでしたが。
真彩ちゃんも少女時代、可愛かったですね。
大人になったデボラは一気に洗練されて、美しく。
初老を迎えると、貫禄まで感じさせて、すごいなと。
歌唱力は言うこと無しのトップコンビ。
それぞれのソロはもちろん、デュエットは何度でも聴きたくなります。
組子たちもトップコンビに引っ張り上げられ、高いパフォーマンスを見せてくれました。
続いて、ショー編です。
▽つづきます