2020年11月8日(日)宙組『アナスタシア』観劇した感想の続きです。
★芹香斗亜 93期・研14
ボリシェヴィキの将官・グレブ・ヴァガノフ役。
街角で出会い、心惹かれた掃除婦がアーニャ(星風まどか)
彼女の命を狙うミッションを課せられ、パリへと追いかけていく。
クコチヒコーーー!?(花組『邪馬台国の風』)
…失礼しました。
いやね、主人公に対して、絶対的に敵対するキャラクターなので。
クコチヒコに比べ、人間的な弱さや切なさを孕んだ人ですけどね。
冷徹な人物として登場しますが、その背景を滲ませているなぁ…と。
私の感じた限りですが、キキちゃんはまだ、グレブを己のものにし切れてないような気がします。
グレブを少し己から離し、第三者の目で観察しているような感覚を受けました。
演じる己を鏡に映して、検証しているように見えました。
納得がいかず、迷いがあるのかな。
ストイックに役を掘り下げるキキちゃんらしいですね。
ここのところ、キキちゃんにフィットした役が続き、役との距離感ゼロで演じる姿を見慣れていたので、久々に新鮮でした。
キキちゃんのこだわりを、こんな形で感じるとは。
(私の思い込みかもしれませんが)
役との間に迷いや距離を感じるといっても、芹香さんの場合、より高度なものを目指す姿勢を感じるということ。
役を更に深めたい、真摯な貪欲さを感じました。
高度といえば、2幕になぜか笑いを取る一面がありまして。
アーニャ相手の台詞ですが、アーニャが無反応なので、滑った?!…と感じられ、それがまた切ないおかしみ?…になってるような。
超シリアス・キャラなのに、まさかの課題。
キキちゃんだから任せられる難関なんやろな。
難関といえば、歌。
本作は歌唱場面が多く、グレブは裏メインテーマ的な曲を任されています。
安定した歌唱に、表現力が加わり、グレブの苦しく切ない心情が伝わってきます。
グレブという役は、本作の暗部を象徴する役どある反面、アーニャ同様、革命に翻弄される役でもあります。
本作で最も、難しい立場であり、役柄かもしれません。
宝塚だから、「かっこいい悪役・黒い役」というアプローチも選べるはず。
なのに、敢えてグレブの人間臭さを掘り下げ、迷いすら演技に反映させている芹香斗亜。
芹香斗亜が演じるグレブは、どんどん進化しそうな予感がします。
グレブは1幕のロシアでは軍服、2幕のパリではスーツ。
どちらもたいそう似合っていて、カッコイイ。
キキちゃんはじめ、宙男たちは高身長のスタイル良しさんが揃っているなぁ、としみじみ。
ありがとな、宝塚。
ビバ、容姿端麗!!
フィナーレでは、和希そらとデュエットダンスを踊ったり。
余裕綽々でリードしてて、かっこ良過ぎ。
娘役のそら君に向ける笑顔が、悪戯っぽくてね?
なんだ!なんだよ!照れるじゃねえか!(ふしゅうぅぅぅ〜〜〜////)
…と、見てるだけでドッキドキでした。
芹香斗亜、恐るべし…。
男役群舞では、キキちゃんに釘付けになりました。
男役群舞以外でも、わりとそうだったかも…。
(…かも?)
(認めろよ、私)
★桜木みなと 95期・ 研12
お調子者のイケオジ・ヴラド役。
詐欺師・ディミトリ(真風涼帆)の相棒。
マリア皇太后(寿つかさ)の侍女リリー(和希そら)は元恋人。
リリーを頼り、皇太后とアーニャの対面を画策。
お髭にメガネのチャラチャラおじさん。
口から生まれてきた、お調子者のムードメーカー・ヴラド。
チャーミングで憎めない人物です。
ややもすれば暗くなりがちの本作で、明るい笑いを提供するキャラクター。
3枚目のおじさんですが、そこは宝塚。
髪型や服装など、洒落者です。
新境地を拓いてますね、ずんちゃん。
リリー(和希そら)とのカップル、お似合いです。
2幕では、ヴラドがリリーを懐柔しない事には、話が始まりません。
歌とダンスを駆使し、目まぐるしくリリー和希を口説き倒す、ヴラド桜木。
歌唱力・表現力・体力が試される場を軽快にこなし、観客を笑わせてくれる、ずんそらの余裕。
『壮麗帝』で見せたワンツーとは一味違う、ずんそらコンビ。
相性の良さ・ポテンシャルの高さを、改めて感じました。
…実は、ヴラドのビジュアル、めっちゃ好きです。
メガネに、非対称で無造作な白髪混じりの髪。
ダンディだなぁ〜♡
ずんちゃんの素顔は、可愛らしい系美形。
素地をほんのり生かし、渋すぎない渋みとキュートな魅力のさじ加減が絶妙です。
★和希そら 96期・研11
マリア皇太后(寿つかさ)の侍女・リリー役。
元恋人ヴラドに口説き落とされ、復縁。
皇太后とアーニャの橋渡しをすることに。
真風&星風コンビのプレお披露目『WEST SIDE STORY』のアニタ役ぶりの娘役。
そら君が演じたリリーは、声が完全に女子。
高くて綺麗な声で、歌えば高音もよく伸び、娘役としてもハイレベル。
感情表現も、決して大袈裟ではなく、適切に伝わってきました。
上手くやろうという欲は感じられないのに、高い舞台技術を余すところなく見せつけてくれちゃう、みたいな。
星組『ガイズ&ドールズ』のアデレイド(礼真琴)に通じるものがありました。
フィナーレのショーでも、娘役として真風涼帆や芹香斗亜と組んで踊ったり。
いやはや、娘役2番手でした、まさしく。
存在感はあるのに出過ぎることもなく、舞台に於けるバランス感覚も絶妙。
アダルトな空気を醸しつつ、ヴラドの口車にも乗っちゃう脇の甘さもあったり、人間味を感じさせるリリー。
人物造形に人間臭さや弱さが滲んでくる匙加減も、なんとも達者だと感じます。
ヴラド(桜木)とリリーの掛け合いは、『アナスタシア』の笑いのオアシス。
ずんそらは見どころの一角を占めています。
そして、和希そらは宙組になくてはならない人財だと改めて実感。
知ってたけどね。
▽芝居巧者トリオやなぁ