2019年(令和元年)10月22日(火・祝)
本日は、徳仁天皇陛下と雅子皇后陛下の即位の礼正殿の儀が執り行われました。
今年限りの祝日です。
そして、宝塚歌劇団月組『I AM FROM AUSTRIA』新人公演の本拠地の上演日。
なんとメモリアルな日に重なったことか。
本公演の演出担当は、齋藤吉正先生。
齋藤先生は、前回の月組大劇場公演『夢現無双』では本公演と新人公演、両方を手掛けられました。
新公は、本公演の演出助手に任せる事が多いだけにビックリ。
2018年雪組『凱旋門』の新公演出担当が上田久美子先生だった時も驚きましたが、さらにベテランの齋藤先生の出馬。
本当に本当に驚きました。
本作の主演コンビは、前作『夢現無双』でしっかりと脇を固めていた二人。
前作の成果が反映された可能性もなきにしもあらず…と思っていたら。
まさにその通りなのでは?
それでは、さっそく本日の新人公演観劇感想を。
★総括
私は 2016年2月から4年近く、新人公演を(全作品ではありませんが)観てきました。
(花組7作、月組4作、雪組7作、星組4作、宙組4作…だったかな?)
『I AM FROM AUSTRIA』は、その中でも一、二を争うハイレベルな舞台。
特に歌のレベルが高い。
主演コンビの歌は、各自のソロもデュエットも、ハッとするほど上手い。
ハッとするほど上手いのに、心地良くて癒される。
演技もとてもナチュラルで、芝居だという事を忘れそうでした。
何かもう、私の中ではかおと君とりりちゃん、付き合ってます。
…ていうか、かおと君って男性だよね?(おい〜)
…実はこれ、終演後に実際にお客さん達が話してはったんですよ。
脇を固める生徒達も達者でした。
巧いだけじゃなく、魅力的。
とても心地良く、あっという間の1時間半。
リピート観劇したい面白さ、気持ち良さ。
TCAさん、月組『I AM FROM AUSTRIA』は、新人公演バージョンBlu-rayも販売して下さい。
最初から最後まで、驚くほどストレスフリーな新人公演でした。
★町田菜花 (新人公演演出担当)
宝塚歌劇が大好きで演出家になられた町田先生。
ファンのツボを押さえた演出家さんです。
永久輝せあ主演・雪組バウホール公演「PR×PRince」で鮮烈な演出家デビューを飾られた事は、記憶に新しいところ。
本公演は、二幕一本物。
2時間を超える大作。
本公演のテイストはきっちり取り入れた上で、綺麗に1時間半強にまとめていらっしゃいました。
本役さんの香りは踏襲しつつ、のびのび自分なりの役を創り上げていた下級生達。
町田先生の指導はきっと、ワクワクするような楽しさに満ちているのでしょうね。
日本初演の海外ミュージカル大作…しかも、難曲揃い…というプレッシャーを感じさせないハッピーミュージカルに仕上がっています。
演出家と演者のスクラムの確かさを感じる、出色の新人公演でした。
ジョージ・エードラー
本役:珠城りょう(94期・研12)
大柄で爽やか好青年、正統派男役のかおと君。
素でジョージを演じられそう。
男子としてのお茶目さ、頼れる感じ、包容力…。
様々な魅力が詰まっていました。
まず、声が良いですね。
男役としてはやや高め。
若い声ですが、好青年のジョージにはピタリとハマりました。
滑舌も良く、台詞がとても聴き取りやすい。
そして、歌。
オペラ歌手を目指していたとの事なので、技巧派かと思いきや、歌い方は素朴で素直。
青年の溢れる気持ちが、音に乗って流れて来ました。
良い意味で、肩透かしを食らいました。
もっと技巧派でグリグリ来るかと予想してたので(^◇^;)
豊かな声量で、伸びやかに、気持ちよさそうに歌っていました。
個人的に激しくツボを突かれたのは、雪山のコテージで目覚めたシーン。
まだ眠いジョージ。
エマ(白河りり)に抱きつき、ころん、と膝枕をしてもらうアドリブ(または町田演出)
いろいろしっかり考えてる、大柄な青年が、膝にコロンって。
あんな甘え方、反則…!!
相手役(白河りり)とのコンビネーションはバッチリ。
だんだん仲良くなる様子も、心が通い合ってからのラブラブも、とてもナチュラル。
とってもキュートなカップルでした。
月組99期首席のかおと君は、長の期 & 主演男役として、ご挨拶しました。
「月組の英かおとでございます」
この「ございます」の部分で、舌が上手く回らず。
温かな笑いが起こりました。
そこはもう言い直さず、先を続けるかおと君。
ご挨拶は全体的に、実直で誠実な人柄が滲み出ていました。
上級生への謝辞をまず述べることが定番の新公主演あいさつ。
かおと君は、あくまでもお客様ありきのご挨拶でした。
新人公演で得た事を、本公演にも生かすためにもますます精進したい、と話していました。
お客さま優先、本公演優先。
新鮮で謙虚な姿勢に、胸が熱くなりました。
かおと君、初主演ほんとうにおめでとうございます。
★白河りり(103期・研3)
エマ・カーター
本役:美園さくら(99期・研7)
歌姫誕生の瞬間をみました…!
私は研1から白河りりを応援してきました。
麻乃佳世や花總まりを彷彿とさせる、可憐で上品なビジュアルが好みで。
「エリザベート」の病院の少女は、自分なりに演技をよくよく練っていました。
「アンナ・カレーニナ」の影ソロは、とても綺麗な声。
「夢現無双」新公の朱実は繊細に役をモノにしていて、魅力的でした。
でもまさか、こんなにも高いポテンシャルの持ち主だったとは…!
登場した瞬間から、ハリウッド女優。
大人っぽくて驚きました。
りりちゃんは小柄で幼い印象がありました。
ところが、すらりとした金髪美女がそこに。
舞台メイク・立ち姿・歩き方・仕草…様々な面で工夫を凝らし、大人の女性像を構築していました。
(すみれコードに抵触しますが…恐るべき十代)
発声や歩き方なども、洋画で見るハリウッド女優そのもの。
しかも作ってる感じがなくて、ナチュラル。
ナチュラルだけど、一流芸能人独特の空気感もある。
虚構に生きる人物を、そのフィクションも含めてリアルに体現する……これは演技なの?
ジョージ(英かおと)と親しくなり始めると、どんどんお茶目な面が見えてくるエマ。
英かおととの呼吸もバッチリ。
とても良い雰囲気が漂ってきました。
そして、特筆すべきは声。
そして歌。
透明感のある美しい声は、台詞も歌唱も聴き惚れます。
滑舌が良く、よく通る、聴きやすい声。
そして歌。
蝶がヒラヒラと舞うように、広い音域を羽ばたきます。
どんなに高低差があろうと、変調しようと、危なげなく自由自在に音を紡いでいきます。
また、終盤で涙ぐんで歌う場がありますが、グッときて声を詰まらせるように聴こえる歌い方とか、絶妙。
実際は泣かずに、声を一瞬詰まらせる事も折り込み済みで、歌っていたはず。
泣く表現を含めた上で、完成された歌でした。
台詞から歌へ移るタイミングもピタリと決めていました。
何回か観たけど、オーケストラと合わせるタイミング、かなり難しいと思うんですよ…。
いろんな男役さんと絡みますが、全員とお似合い。
隣に並んだ男役さんを引き立てる娘役力を感じます。
歌も、ソロでは歌い上げますが、デュエットでは男役さんを立てつつ歌っていました。
上手いからといって出過ぎない、思慮深さを感じます。
かおと君のご挨拶の間中、ずっとかおと君を見つめていたりりちゃん。
信頼を寄せている様子が、その穏やかに見守る瞳から伝わってきました。
そのまなざしは、聖母のようでした。
正統派ヒロインにふさわしい気品とビジュアル。
加えて、高い歌唱力と演技力。
ダンスもしなやかです。
ヒロインになるべくしてなったんですね。
特に歌は、ぜひ聴いてほしい。
次回作では、りりちゃんにソロ歌唱の機会が与えられますように。
多くの人に聴いてほしい天使の歌声です。
▽月組新公すばらしかった…!!(感想は続きます)

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