花組『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』『シャルム!』宝塚大劇場公演。
開幕してから、早くも2週目に突入しています。
10日程で、微調整がバシバシ行われているように感じます。
初日付近で観劇された方が今ご覧になったら、印象が変わるかも。
基本的な変化はないのですが、受ける印象がなんか違うんです。
特にメインキャストは回によって演技を工夫しています。
その場で相対する相手の反応によって、それを受けての反応や表情を変えていたり。
…と思っていたら、脇もいろいろ変化してました。
小芝居にしろ、表情や反応にしろ、それぞれ工夫してるんだなぁ…と。
明日海りお率いる花組の舞台は、生きて変化しているんだな…と改めて実感しています。
千秋楽なんて来てほしくないけれど、どんな完成形をみられるのか気になります。
…という訳で、そろそろ書いてみましょうか。
キャスト別の感想です。
◆華 優希(100期・研6)
ヒロイン・シャーロット。
華優希は、16歳~晩年まで幅広い年代を演じています。
子爵令嬢シャーロットは、薔薇の季節、花々が咲き乱れる領地のカントリーハウスで過ごしていました。
母(城妃美伶)ともども美しい庭園を愛し、想像力豊かで素直な少女でした。
母の早すぎる死に接し、父は思い出深い庭園を売却。
妖精を描き、仕事を持ちたいと望むシャーロットは、寄宿学校で変わり者扱い。
継母の薦めによる成金との結婚は、早々に破綻。
その後も父の死・事故と後遺症など、次々と不幸に襲われたシャーロット。
田舎へと転居し、いつしか消息が途絶えました。
…と、あらすじをざっくり書いただけでも、波乱万丈な半生を送るシャーロット。
大人への階段を昇りつつある、清楚で可憐な少女。
夫の女遊びと暴力に苦しむ、淑やかな人妻。
車椅子に乗った、上品で穏やかな老婦人。
子供たちに囲まれると、慈愛に満ちたおばあちゃん。
これら全てを、極めて自然に演じ切りました。
声の高さ・話し方・醸し出す空気など、驚くほどナチュラル。
歳はもちろん、そのとき置かれている状況、抱いている気持ちなどが伝わってきます。
特筆すべきは、老年期。
華優希が演じる老婦人は、気品や温和さに加え、風雪を耐え抜いた芯の強さが滲み出ています。
半世紀の時を超えて、エリュ(明日海りお)と再会したシャーロット。
車椅子でほぼ身動きできないシャーロット。
動きはほとんどなく、向き合うだけの二人。
しかも、ごくごく短い時間です。
…ですが、その場面こそ、明日海と華の花組トップコンビの真骨頂だと、私は思います。
芝居にこだわりを持つ明日海と対峙して、華は一歩もひけを取りません。
これは実際に観て、感じてほしい。
華優希が創りだす波動を感じてほしい。
明日海りおと華優希ががっぷり組む芝居を、もっと観てみたい。
大浦みずきさんが「ダンスの花組」を確立されたように、「芝居の花組」を創り出せたであろう新トップコンビだと思います。
◆柚香 光(95期・研11)
植物学者(…だけど会社員)ハーヴィー・ロックウッド。
孤児だったハーヴィーは8歳のとき、庭師の叔父(水美舞斗)に引き取られました。
叔父の影響で、ボールは友達ならぬ「植物は友達」に。
「時は金なり」がスローガンの会社で、コスト削減と時間に追われています。
花が咲かない荒れ果てた庭園に派遣されたハーヴィー。
そこでエリュに見込まれ、シャーロットの行方を捜すよう依頼されます。
誠実な青年学者(会社員)を演じている柚香さん。
「非現実的、非科学的なことは信じない!」と言いつつ、妖精たちに翻弄され、エリュの頼みに精一杯応えようと奔走します。
仕事上の厳しいミッションも、エリュの助言を活かして解決していくハーヴィー。
まじめで誠実な好青年を、素直に演じています。
シリアスな物語の中で、ハーヴィーは笑いを取る一面も担っています。
飛龍つかさ・音くり寿らが演じる妖精たちに茶々を入れられ、振り回されます。
妖精たちが近づいてきた合図・霧が立ち込め始めると、頭を抱えたり。
妖精に突っかかられて、紅茶をこぼしかけたり。
口々にあれこれ言ってくる妖精たちに「うるさい!」と怒鳴ると、同僚たち(妖精は見えず)に謝られ、バツが悪くなったり。
…そして、これらの芝居をほぼ毎回、れいちゃんはアレンジして演じています。
例えば、妖精(飛龍つかさ)に突っかかられ、紅茶をこぼしかける場面。
ある時は、手に持ったティーカップから紅茶がこぼれそうになり、慌てたり。
ある時は、手に持ったカップ&ソーサーを落としかけたり。
ある時は、ティーカップの紅茶がはねて手にかかり、熱がったり。
霧が立ち込めて頭を抱える箇所も、ちょっとずつ台詞の言い方や、頭の抱え方なども変えています。
笑いが起こる数少ないポイントを、秘かなアドリブポイントにしているのかな。
お客さんを楽しませるサービス精神を発揮しています。
同時に、受けが良いからと調子に乗らない、やり過ぎないさじ加減をわきまえているな、と。
れいちゃんは『ポーの一族』から二番手となり、極めて重要な役を担ってきました。
毎作品、れいちゃんなりの頑張りが透けて見えてくるようでした。
今作では今までになく落ち着いて、しっかり己の役どころを務めている印象があります。
決して出過ぎず、良い意味で柚香光カラーを抑え、ハーヴィーとして存在しているな、と。
頼もしい二番手、頼もしい舞台人に成長されたと思います。
★華優希と柚香光
華優希と柚香光は、今作では芝居の絡みはありません。
ですが、それぞれがとても良い味わいを見せ、素晴らしい演技をみせてくれています。
次作からは、この二人が組む。
そう思うと、「あぁ、楽しみだな」と素直に感じました。
そして、「そのとき、明日海さんはいないんだ…」
突如、涙腺決壊。
れいちゃんと華ちゃんの未来が楽しみであるほど、明日海さんの不在をくっきりと感じた夏の終わりでした。
▽キャスト別感想、まだまだ続きます

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