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朝日新聞 明日海りお卒業会見
涙、涙、また涙。11月24日で宝塚歌劇団を退団する花組トップスター・明日海(あすみ)りおが13日、大阪市内のホテルで会見を行った。宝塚や仲間、ファンを思ってたびたび涙をこぼしながらも、時にユーモアあふれる返答で笑いも誘った。
歌劇100周年の2014年にトップスターに就任し、本拠地となる宝塚大劇場での主演作9作で史上最高の集客力を誇り、新世代の顔として宝塚を引っ張ってきた。6月には、宝塚歌劇では初となる横浜アリーナでのコンサートが予定されている。
真っ白なスーツ姿でのぞんだ会見では、冒頭から涙ぐみ、「最後までもっともっと男役としての幅を広げていけるよう、花組がよりよい組となるよう、自分のできるすべてを捧げて舞台に立ちたいと思います」とかみしめるように語った。 主なやりとりは次の通り。
◇
――退団を決めた時期や経緯は。
下級生たちが頑張っている姿を見て、私がいつまでもいたら窮屈なんじゃないかな、というのは早い段階から感じていました。
劇団の方にご相談し始めたのは、「ポーの一族」(2018年)のときくらいですかね。それまでは「舞台を必死に務めることで、組のみんなもついてきてくれているんだ」という思いがあったのですが、ふと、舞台の上で役柄に身を任せていると、組のみんなが前に向かって進んで行っている感覚がありました。
もしかしたら、エドガー・ポーツネルという役が、落ち着いてみんなを見渡せる奇跡を起こしてくれたのかもしれないです。そういったものを感じて、私がいなくても大丈夫なんじゃないかなと感じました。
その頃にちょうど、(相手役の)仙名(せんな)〈彩世(あやせ)〉からも卒業の時期を相談してもらって、せっかくなら、ゆきちゃん(仙名)が卒業していくのを見守りたいなと思いました。
もちろん、ファンの方の中には、「2人で一緒に退団してはどうか」とおっしゃる方もいたと思うんです。けれど、それまでお世話になった娘役さん、蘭乃(らんの)はなちゃん、花乃(かの)まりあちゃんが、退団の時に、ちゃんと「お姫様」として扱ってもらえて、サヨナラショーで彼女たちが主役で輝いている姿をみられるのがうれしかった。なので、ぜひゆきちゃんも見送ることができたらと思い、(仙名の退団公演となる)「カサノヴァ」の次の公演で、退団しようかなということを決めました。
――花組生には、退団についてどう伝えましたか。
カサノヴァの千秋楽の前日(10日)の終演後にお話をさせていただきました。私もトップにならせていただいて5年くらいなので、みんな絶対そろそろだろうなというのは分かっているので、きっと、びっくりしないだろうなと思っていたのですが……。(手で涙をふいて)私が話し出したら、みんながぼろぼろと泣いてくれて……。
あ、ハンカチあります!(と言って、白いハンカチを取り出して、会場の笑いを誘う)。みんなが泣いてくれることがうれしかったですし、次の日も公演がありまして、花野(はなの)〈じゅりあ〉さん、桜咲(おうさき)〈彩花(あやか)〉、仙名(彩世)始め、今の花組を支えてくれた仲間たちが卒業する大事な日なので、みんなが泣き崩れるんだったら、私がしっかりしないとダメと思いました。
――退団を伝えた心境は。
すっきりはしました。みんなに伝える日が近づくにつれて、ハラハラしてきてしまって。「終演後に集まってください」と伝達を回したときに、みんなが「やっぱりそうなのか」という雰囲気になって。私は知らん顔をしながら、舞台に集中しなければいけないという状況が、なかなか難しかったです。「何も考えないで舞台に立ちたいのに……」という思いだったので、みんなに話せてスッキリできた。
あとは、泣いているみんなが、もう、可愛くてしょうがなくて(と笑顔をみせる)。昨日もいろんな方からご連絡をいただいて、私も自分がこんなに泣くとは思ってもみませんでした。
――男役として、舞台人として大切にしてきたことは。
1日1日、1公演1公演、少しでもクオリティーをあげていくこと。映画とかよりも(チケット代が)ずっと高いわけじゃないですか(笑)。学生のお客さんとかもいらっしゃいますし、お金を払ってきていただいているので、「宝塚」という名前に甘えずに、自分たちのクオリティーを上げていくということは、すごく意識していました。
あとは、宝塚ならではの品はちゃんと失わずにいたいなということと、宝塚が好きだという気持ちと、男役が大好きだという気持ちは、つねに燃やし続けていました。
――トップに就任してからの心境の変化は。
トップにしていただいてからの5年間の中で、ずいぶん考え方が変わりました。でも、宝塚に対する憧れや大好きな気持ちは、ずっと一貫して変わらなかった。さらに好きになっていった感じです。
――つらかったことはありますか。
一番つらかったのは、組替えのときですかね。(2013年に長年過ごしてきた月組から花組へと組替えした)育った組を離れるというのが、本当につらかったんですけれど……。(涙をこぼし、声をつまらせながら)でも、花組にこられて、花組の男役になって、「花組のトップスターとして恥ずかしくない舞台人になるぞ!」と頑張れたことが、私の宝塚人生の中では、一番幸せなことだったなと思います。
――トップスターとして何に支えられてきたか。
日々いただく、お客様やファンの方からの拍手やお言葉です。「この役のここが楽しかったです」とか、ファンの方のお気持ちで、すべて帳消しになっていましたね。
あとは、いつも一緒に頑張ってくれる組の仲間だったり、いつも舞台に全力をかけていらっしゃるスタッフのみなさま。みんなで力を集結させてつくる舞台というのが大好きなので、それに支えられていました。
――月組時代には、トップスター龍真咲(りゅうまさき)の元で、「準トップ」を務めた。その経験は、どう生きているか。
役替わりをさせていただくことで、「あのとき頑張れたんだから、少々のことは大丈夫だ」という根性がつきました。
組の頂点である龍真咲さんが、主演と2番手の役を覚えて、組を守って下さっていたんだなというありがたみに、(自分が)トップになってから気づきました。とても感謝しています。
――退団について同期とはどんな話をしましたか。
一番最初に前もって伝えていたのが、雪組の(トップスター)望海(のぞみ)〈風斗(ふうと)〉。昨年12月の「タカラヅカスペシャル2018」のとき、楽屋が一緒で、2人だけの楽屋だったので、さらっと伝えましたところ、泣いていましたね……。
ほかの同期には、昨日の発表が出る前にそれぞれ連絡しました。
――11月に退団した後の予定は。
卒業したあとは、まずは職探し(笑)。しなければ生きていけないなというのと、自動車の運転免許ももっていませんので、免許を取るために教習所に行きたいなと思っています。
――結婚の予定は。
全然それに関しては、未知ですね。でも私、台湾で手相をみていただいたときに、「結婚線が何本かある」って言っていただいたんです。これだけ宝塚にいる間に、かわいいお嫁さん(相手役)を何人ももらってしまったので、全部消費してしまったのではないかと思っています。
――ファンへのメッセージは。
私もいろんな心境のときがあって、ファンのみなさまには、本当に舞台でしかお返しすることができなかったのが歯がゆいです。これからも舞台でしかお返しできないんですけど、それだけを楽しみに、いつもついてきてくださるファンの方……。(声をつまらせながら)下級生の頃から見守って下さった方や、最近熱烈にのめりこんでくださった方もいて、みなさまがいるからこそ、「もっともっとステキな男役になろう」とか、「もっと違う面をみせたいな」という意欲が湧いてきていたので、感謝の気持ちでいっぱいです。
――下級生に残したい言葉は。
そうですね、私のいるうちは、いつもと変わらず、思いきり甘えて、のびのびやってくれたらいいなと思います。
みんな、色々と感じながら舞台に立つと思うので、肩の力を抜いて、楽にさせてあげるというか、「大丈夫だよ」と言ってあげたいなと思います。
◇
退団公演は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で8月23日~9月30日、東京宝塚劇場で10月18日~11月24日に上演されるミュージカル「A Fairy Tale ―青い薔薇(ばら)の精―」、レビュー「シャルム!」。(尾崎千裕、杢田光)